間髪をいれず_かんはつをいれず
自体が差し迫っていて、時間にゆとりがないこと
朝二度寝してしまって慌てて支度をし家を出たとか、通学路で黒猫が横切ったとか、日焼け止めを塗り忘れただとか、こんな暑い日に限って体育の授業があるとか、そんな小さな不幸が積み重なって、
なんだか、「あ、今日はダメな日だな」と思った。
今日は何をやってもダメな日だ、きっと酷く不運な事が起こるに違いない。
いつもはちっとも当たりゃしないのに、今日に限ってそんな勘が当たってしまった。
恨めしそうに空を見上げて、現実が変わらないことを嘆く。
そういえば今朝は、慌てて家を出たから天気予報を見ていなかった。
折り畳み傘も、前回使ってからまだカバンに戻していなかった。
全部が全部、自分の怠惰の結果なのだから笑えるものだ。
やめろ、嬉しそうにこちらをチラチラ見てくるな。
ちなみに降谷零は私が傘がないことに気付き絶望している間に「僕は急いでるから先に帰る」とバレバレの嘘をつき帰って行った。見捨てるなよ。
濡れて帰るか、愛重めの推しと相合傘して帰るか、究極の選択である。
ここは濡れてでも全速力で走って帰りたいところだが、1つ問題がある。
中学から家、ちょっと遠め。
ギリギリ学区内に入ってる場所だからマジで遠い。全速力で走り続けたらまず体力が持たないしそもそも信号に引っかかるだろう。
長時間雨にさらされるとどうなる?そう、風邪をひく。風邪をひいて無遅刻無欠席に傷を付けたくないし、休んでる間に先生がなんか大切なこと言ってたら大変だ。
ぐ、ここはもう、仕方がないけど……
たいへん不本意だが、背に腹は代えられぬので景光の傘に入れてもらう。
大きめの傘とは言っても、一人で使う事を想定されているからかやはり狭い。少し濡れるけど端に寄ろうか。
普段はこんなに近づくことのない心地の良い声が耳元で響き、少しびくりとしてしまう。
このCV緑川光がよぉ……。
そして、すっと景光の傘を持ってない方の手が伸びてきて、体を引き寄せられる。
それを拒否しなかった時点で、私はもうドツボにハマっていたのかもしれない。
肩が触れる。ふと左を見れば、まつ毛の長さが分かるくらい近くに彼の顔があった。
傘に打ち付けられる雨の音がやたらうるさくて、この世界に私と景光しかいないんじゃないかと錯覚してしまう。
吸い寄せられるようなブルーグレーの瞳と、目が合ってしまう。
やたらと甘ったるい声が鼓膜を震わせ、ゆっくりと脳を侵食する。
顔が熱くなるのを感じる。きっと今、私の顔は真っ赤なのだろう。
それでもなお、熱を帯びたブルーグレーの瞳から目を逸らせないでいた。
ニヤリ、と彼の口角が上がったのが分かった。
顔が近付いて、そして、触れるだけのキスをする。
ああ、だから、相合傘なんて嫌だったのだ。
求められたら、私はきっと拒否できない。
だって、だって、
推しだと言って気付いてないフリをしていたけれど、私はもうとっくに景光に惚れている。
だけど顔が紅潮してたまらないのも、今はまだ暑くてたまらない夏のせいにさせてくれ。
あなたの苗字あなた(15)
5年も隣の家に女子力高いイケメン男(愛重め)が居て自分に好意を伝え続けられたらそりゃ惚れる。でもまだ知らないことにしておきたい。
人生一周目を入れてもファーストキスだった。
愛の重い男怖い、人が軽率に死ぬ世界も怖い。彼女は彼女なりに精一杯生きているのです。
諸伏景光(15)
遂に意中の相手と初キスを果たす愛が重い男。
あなたが自分に好かれて満更でもないことなどとっくに気付いている。早く堕ちてきてほしい。
降谷零(15)
影のMVP。
あなたが傘を忘れたと気付いた瞬間に景光に「相合傘をしろ」と耳打ちし颯爽と帰宅していった。
後日景光からキスができたと聞きガッツポーズをする景光の恋応援委員会会長。
なんかヤンデレとはちょっと違うな……と思ったのでこの作品のタイトルを「人生二週目以下略 推しはヤンデレているんだが」から「人生二週目以下略 推しは愛が重い」に変更しました。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。