鬼の身体に、浅くではあるが一太刀入った
霧を纏った刀が、鬼の脇腹を裂いていた
鬼は笑っていた
口元から黒い血が垂れ、皮膚がじくじくと再生していく
驚くほどの速さで、傷が塞がる
私は再び構えを取り呼吸を整える
冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、足元の霧に意識を向ける
刃を回転させるように振ると
霧が激しく舞い、視界が一気に白く染まる
その中を駆け抜け、鬼の背後を取る――
……は ず だ っ た
――ゴッ!
背中に強烈な衝撃が走った
視界がぐらつき地面に膝をつく
鬼が無数の腕のような影を背中から伸ばしていた
霧の中から現れたそれが、私を弾き飛ばしたのだ
呼吸が乱れる
膝が震える
だが、諦めるつもりはない
立ち上がり刀を強く握る
鬼が距離を詰めてくる
大きな口を開き、黒く伸びた舌を垂らしながら
鬼の影が、再びこちらへ迫る
背中の痛みは激しく、足は思うように動かない
握る刀が、ずっしりと重く感じる
鬼はクスクスと笑う
楽しんでいるようだ……
鬼がゆっくりと歩いてくる
唇が切れ、血の味がする
震える足に力を込めて
呼吸が乱れて、視界もにじむ
鬼の手が、すぐ目の前まで迫る
鋭い爪が、私の肩を裂く
膝をついた
もう立てないかもしれない
目の前が揺れる
鼓動の音だけが、大きく響いていた
鬼が、ゆっくりと私に手を伸ばす
その手が――
本能だけで、最後の一閃を振るう
でもそれは、鬼の腕に軽く弾かれて終わった
鬼の爪が、あなたの頬に触れた瞬間
涙がこぼれそうになった
血まみれでもう立てないほどにボロボロになった
ーーーその時
風が変わった
霧が不自然なほど静かになった
でも、まだ誰も見えない
ただ空気がすぅっと鋭く張り詰めた
鬼が、ピクリと動きを止めた
私は、地面に手をついたまま、ぼんやりと感じていた
でも、意識がぼやけていく
音が遠くなる
その声は、風に消えていった
――静寂が、訪れる
そして次の瞬間。
霧の向こうからようやく彼が――
いや、まだ見えない
まだ、ほんの気配だけ
でも、確実に近づいている“何か”があった
二話目
やばい3話目更新したいどうしよう
1日1話
やぶってもいいかな、???












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。