鬼は舌なめずりをしながら、あなたを見下ろしていた
霧が濃く、肌にまとわりつくような冷たさが骨まで染みる
傷だらけの身体
握る刀にはもう力が入らない
立ち上がろうとするも、膝ががくりと折れて地面に手をつく
鬼の爪が、あなたの首元へと伸びてくる――
その瞬間だった
――ザッ
空気がふっと変わる
霧の奥から、一筋の風が走るような感覚
その場にいた鬼も、直感的に「何か」を察したのか、顔をひきつらせた
低く静かな声と共に、霧の中から現れたのは――
長く艶やかな黒髪、均整の取れた小柄な体躯、そして何よりも無表情で澄んだ瞳
霞柱・時透無一郎
----ずばっ!!!
唐突に、鬼の右腕が空を舞った
すぐに、胴体が横に裂けて――鬼の体が、まるで霞に溶けるように崩れ落ちていく
霧の中から、一筋の銀の光が走った
最後の言葉も届かないまま、鬼は塵となった
しん……とした空気の中
あたりには、淡く霧が立ち込めている
その声に、あなたの目がゆっくりと開く
刀を下げ、ゆっくりとあなたの元にしゃがみ込む無一郎
血に染まったあなたを見て、小さく眉を寄せる
無一郎はしばらく黙って、あなたの目を見つめていた
やがて、静かに口を開く
その言葉が、胸にじんわり染みて、思わず涙がこぼれそうになる
そう言って、あなたの手をそっと握る
その静かな声に、張り詰めていたものがゆっくりとほどけていく
無一郎は黙って、、その後ゆっくり口を開く
あなたの意識が、静かに遠のいていく中
最後に聞こえたのは――
今日も2話更新しちゃいます












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。