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夢を見る。
遠い遠い夢を。
あの時の私にあるのは、快楽と絶望だけで
導いてくれたあの人への親愛だけで
それ以外は、なにも感じる必要なかった。
コロシアイは夢で。絶望は終わって。みんな、段々元のみんなに戻っていって。
私も、段々元の私に戻っていって。
そうして手に入れた、『平穏』。
なのに、どうして______
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空を厚い灰色の雲が覆っている。数ヶ月前にいた南国の島とは打って変わって、外では冷たい風が音を立てて吹き、冬の空気を運んでいる。
廊下でお二人はそう言いながら、書類がびっしり挟まれたファイルを運んでいる。苗木さん達のところへ届けに行くのだろう。
私達は元希望ヶ峰学園の生徒で、そして元『絶望の残党』。
あの人の導きのまま、この世を絶望一色に染めるためにたくさんの罪を犯した。人の命を奪い、遊び、壊し、そして絶望に落とした。
そんな私達を助けようと奮闘してくれたのが、苗木さんをはじめとする『未来機関』のみなさん。ヒトゴロシである私達を更生させるため、南国リゾートを舞台とした修学旅行で私達を絶望から脱却させようとした。
あの人のアルターエゴがモノクマを駆使して、私達の南国リゾート生活を絶望に染めた。
そのことについて、私からは何も言えない。
ただ、今こうして仮想空間から帰ってきた私達を、『未来機関』のみなさんが丁重に扱い、社会復帰に向けていろいろ手助けをしてくれていることには、感謝している。
まだ絶望から完全な復帰はできていない人は数名いる。私も、多分その中に入っている。
それでも、『未来機関』の方達の事務作業やちょっとしたお仕事の手伝いをさせてもらえて。ただ施しを受けるだけでなく、罪の償いの機会を与えてもらえて。
まだ完全ではないけど、まだ希望を見れるほど綺麗ではないけれど
少しずつ、前に進めていて
それなのに______
ぼーっと考え事をしていると、西園寺さんがいつの間にかこちらへ近寄ってきていた。慌てて頭をペコペコ下げながら、道を譲る。
小泉さんは心配そうな顔で、私の目をまっすぐ見る。
ほんとうに、優しい人。穏やかで、前向きで。こんな私のことを心配してくれて、手を差し伸べてくれる。
綺麗で、まっすぐで
またぼーっとしてしまっていた。折角声をかけてもらったのに。慌ててまた頭を下げる。
そんな私に小泉さんは心配そうに、頭を上げてよと言った。
私がそう言うと、小泉さんは満足したように太陽のようにまぶしい笑みを浮かべた。
お二人はそう言い、背を向けた。二人の姿が段々遠くなる。一瞬感じたあたたかさは徐々に冷え、再び冬の空気が心を冷やした。
迷惑。役立たず。お荷物。
その言葉を何回も何回も投げつけられた。
私も、そう思う。
あの人
あの、魅力的な人
すべての人を虜にし、そして壊す
あの人からしたら周りの人間は、ただのゲームのキャラクターでしかない
それでもあの人は確かに
心臓が大きな音を立てて暴れる。体温が上昇していくのがわかる。頭の中を小さな快楽が支配していく。
あの時、あの瞬間、あの人に必要とされた
それを思い出すだけでこんなにも、絶望的に私はあの人を心から崇拝してしまう。
あの人のことを、忘れないと
ぎゅっと爪を手に突き立てる。
微量な痛みが伝わって、苦い感情が込み上げた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。