女子たちの笑う声が聞こえる。
この声は‥‥朝陽ちゃん?
泣いてる‥‥‥!?
俺は、朝陽ちゃんの声がした体育館倉庫を覗いた。
──────────は?
朝陽ちゃんのあの長い髪の毛は、ハサミと一緒にぱらぱらと地面に落ちていた。
いじめ現場を目撃して、頭に血が上った。
俺は、女子たちにずかずかと近付く。
は?人のこといじめといて今更かよ。
女子だからって容赦は────────
突然、咲祈が体育館倉庫へと入ってきた。
そして、俺と女子たちを引き離す。
‥‥‥は?
咲祈は女子たちに向かって問いかけた。
‥‥‥5回以上?朝陽ちゃんは、前からずっといじめられてたってことか?
咲祈は、深く、深く、黒い瞳で女子たちを見つめる。
咲祈はそう言って、目線を朝陽ちゃんの元へ移した。
その間に、女子たちは体育館倉庫から出て行った。
咲祈に差し出された手を、朝陽ちゃんは握り返した。
それから俺たちは井沢を呼んで、その後に近くの公園へと向かった。
朝陽ちゃんのバラバラに切られた髪を、器用にハサミで整える咲祈に俺は話しかけた。
すると、咲祈は口を閉ざした。
‥‥‥は?
咲祈はうんともすんとも言わなかった。
朝陽ちゃんは冷たい声で、幸せを逃がすみたいに自嘲しながら話した。
咲祈は、いつもの咲祈じゃなかった。
まるで、人を殺すかのような目をしていた。
───────やっと、分かった。
咲祈は訴えてるんだ。俺らに。
「偽善者になるな」って。
光のこもらない目で、助けを求めるかのように。
まだ、俺らは知らない。
朝陽ちゃんのいじめについても。
咲祈の、あの光がこもらない深く真っ黒な瞳の奥も。
何も、知らない。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。