第11話

じゅう
199
2019/04/27 15:11 更新
クラスメイト
あはは!
クラスメイト
ざまーみろ!
女子たちの笑う声が聞こえる。
日暮 朝陽
ぅ‥‥
この声は‥‥朝陽ちゃん?

泣いてる‥‥‥!?
どうした!?
俺は、朝陽ちゃんの声がした体育館倉庫を覗いた。
クラスメイト
え‥‥
クラスメイト
柚木‥くん‥‥‥


──────────は?


何だよ、これ‥‥
朝陽ちゃんのあの長い髪の毛は、ハサミと一緒にぱらぱらと地面に落ちていた。
クラスメイト
こ、これは‥‥
お前ら‥‥!!
いじめ現場を目撃して、頭に血が上った。

俺は、女子たちにずかずかと近付く。
クラスメイト
ひっ‥‥‥
クラスメイト
ごめんなさい!ごめんなさい!!
は?人のこといじめといて今更かよ。

女子だからって容赦は────────
三田 咲祈
はいはーい、そこまでー
突然、咲祈が体育館倉庫へと入ってきた。

そして、俺と女子たちを引き離す。
咲祈、こいつら‥‥‥!
三田 咲祈
分かってるから
‥‥‥は?
三田 咲祈
ねえ、あのさ
三田 咲祈
この前俺が見なかったことにした意味、分かってないでしょ?
咲祈は女子たちに向かって問いかけた。
クラスメイト
意味‥‥?
三田 咲祈
ほら、分かってない
三田 咲祈
「今回だけは見逃してあげるからこれからはしないで」って意味だったんだけどな。今回で何回目?俺はせいぜい5回以上見てるけど、今回はそれよりずっと酷い
‥‥‥5回以上?朝陽ちゃんは、前からずっといじめられてたってことか?
三田 咲祈
どうする?もう一度チャンスをあげるけど
三田 咲祈
もうしないんだったら、早く出てって
三田 咲祈
するんだったら、容赦はしない
三田 咲祈
さあ、どっち?
咲祈は、深く、深く、黒い瞳で女子たちを見つめる。
クラスメイト
っ‥‥!
クラスメイト
しっ、しません!
三田 咲祈
ん、なら良いよ
咲祈はそう言って、目線を朝陽ちゃんの元へ移した。

その間に、女子たちは体育館倉庫から出て行った。
三田 咲祈
大丈夫?‥‥‥じゃないか
三田 咲祈
まあとりあえず、外出よう
日暮 朝陽
う‥ん‥‥‥
咲祈に差し出された手を、朝陽ちゃんは握り返した。






















それから俺たちは井沢を呼んで、その後に近くの公園へと向かった。
‥‥‥なあ、咲祈
朝陽ちゃんのバラバラに切られた髪を、器用にハサミで整える咲祈に俺は話しかけた。
三田 咲祈
ん?
いつから、知ってた?
すると、咲祈は口を閉ざした。
何だよ、言いたくねぇ事情でもあんのか?
三田 咲祈
そんなとこ。口止めされてるから
は?口止めって‥‥
井沢 紫乃
じゃあ、その口止めした本人に聞けばいいの?
三田 咲祈
‥‥‥
三田 咲祈
だってさ、朝陽
‥‥‥は?
井沢 紫乃
日暮さんが口止めしたって言うの?いじめられた張本人なのに?
咲祈はうんともすんとも言わなかった。
井沢 紫乃
ねえ、聞いてr‥‥‥‥
日暮 朝陽
そうだよ
朝陽ちゃんは冷たい声で、幸せを逃がすみたいに自嘲しながら話した。
日暮 朝陽
日暮朝陽はいじめられている、それだけ
日暮 朝陽
私はそれを知られたくない
日暮 朝陽
でも三田くんにバレてしまった
日暮 朝陽
だから口止めした
日暮 朝陽
‥‥‥ね?何もおかしくない
は?おかしくないって‥‥‥
日暮 朝陽
おかしくないよ
日暮 朝陽
いじめのことを相談するなんて、そっちの方がおかしいよ
井沢 紫乃
あなたは何を言って‥‥‥‥
三田 咲祈
やめろ、話が進まねぇ
三田 咲祈
部外者は黙ってる方が良い
は!?部外者ってお前‥‥‥!!
三田 咲祈
部外者だろ
三田 咲祈
今日初めて知って、部外者からちょっと関係者に変わっただけだろ?
三田 咲祈
それだけで偽善の言葉をかけられる身にもなってみろ
井沢 紫乃
偽善じゃない
三田 咲祈
偽善だ
三田 咲祈
いじめのことを相談できるくらいなら、この世に“いじめ”という単語は存在しないよ
三田 咲祈
そんなことも考えられないお前らが、偽善者って言うんだ
じゃあ‥‥お前はどうなんだよ
三田 咲祈
勿論偽善者だよ。れっきとしたね
三田 咲祈
そもそも、偽善者じゃない人間なんてこの世には存在しないから
三田 咲祈
存在してたら逆に、お目にかかりたいもんだよ
咲祈は、いつもの咲祈じゃなかった。

まるで、人を殺すかのような目をしていた。



───────やっと、分かった。

咲祈は訴えてるんだ。俺らに。


「偽善者になるな」って。


光のこもらない目で、助けを求めるかのように。





まだ、俺らは知らない。



朝陽ちゃんのいじめについても。







咲祈の、あの光がこもらない深く真っ黒な瞳の奥も。









何も、知らない。

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