第29話

二十八話 まかない
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2022/07/15 15:10
モストロ・ラウンジでバイトを始め、最初に皿洗いや物運びなどの仕事を任せられた。
後半、フロイドとジェイドに手招きされキッチンへ向かうと、作業台にはタッパーとモストロ・ラウンジの料理が数品並べられていた。
あなた
あなた
何をしてるんだ?
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
まかないの準備〜。
つっても小エビちゃんのだけど
あなた
あなた
くれるのか?対価を要求する気なら断るぞ。準備してくれて悪いが
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
疑り深いですね。対価は要求しませんよ。まかないですから。アズールにも言われましたし
「アズールが?」と名前を口に出すと、本人が「そうですよ」と言いながらキッチンへやって来る。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
あなたさん、もうすぐ上がりでしょう?
あなた
あなた
そうだな
返事をすると、フロイドが「小エビちゃんどれ持って帰る?」と聞いてくる。
テーブルに並べられているのはパスタ、サンドウィッチの類からデザートの類。
彼等の作る洋食ら見栄えが良く、美味しそうだ。
あなた
あなた
迷うな。グリムはよく食べるし……
あなた
あなた
(うちの鶴丸は少食だし。食べる時は食べるが。でも、麺類は好きだったな。ラーメンとか、そばとか、カップ麺もこっそり食べてた時あったし)
「では、有難く貰うとして……」と呟きながら、テーブルの上に置いてあったトングで持ち帰る物をとり、タッパーに入れる。
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
パスタ、お好きなんですか?
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
さっきからほとんどパスタ類ばっかとってるし
ジェイドとフロイドに言われ、「グリムは大食いだから炭水化物でお腹いっぱいになって貰おうと……勿論、他のも有難く頂こう」と誤魔化した。
ある程度貰った後は、念の為持ち歩いている袋にタッパーをしまう。
あなた
あなた
私にとっては初めてのまかないだな。
帰ったら美味しく頂こう
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
貴方、アルバイトもしたことがないと言っていましたよね?
あなた
あなた
言ったな
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
貴方は現在、一年生のクラスにいますが……見た所、大人びてはいるけど僕達とさほど年齢が変わらないように見えます。元の世界で学校の友人と出掛けるのにお金が必要になったりはしないんですか?自分の為でも構いませんが
あなた
あなた
生憎だが、元の世界で学校にも行った事も無ければ街に出掛けて遊ぶ事もないのでな
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
マジで?小エビちゃん学校行ったり、遊んだりしねぇの?
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
と言うことは、ナイトレイブンカレッジが初めての……?
あなた
あなた
そうなるな。制服を着るのも初めてだ
私自身特に自分を不幸だとは思わないが、周りからは意外そうな目、哀れむような目で見られたりする。何も、お金があって学校に行けて、家族がいるだけが“幸せ”とは限らない。それ等が無くても、自分を程々に満足させられたのなら、幸せなのではないだろうか。
人によっては、寝れるだけで幸せと言う者もいるだろう。明石国行が良い例だ。
「怠けられる時間があるだけ幸せですわ」とか適当なことを言っていた。
あなた
あなた
(その時幸せでも、社会に出て苦労する……とも言えるが、苦労=不幸とはならないだろう。何なら、苦労してなくても自分を不幸だと思う者もいる訳だし)
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
人様の家庭事情を探るわけではありませんが、御家族は?
あなた
あなた
もういない
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
小エビちゃんさ、元の世界でどうやって生活してたの?
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
親戚と暮らしていた、とかですか?
あなた
あなた
いや、面倒を見てくれる者や暮らす場所は母が亡くなる前に残してくれていたからな。ずっとそこで暮らしている
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
面倒を見てくれる方と住む場所を母が残し、尚且つ学校もバイトも行ったことも無く、したことも無い……。まさか、実はお嬢様で家庭教師を雇っていたとか?
アズールもグリムと同じことを言うので、「お嬢様では無い」とハッキリ答える。
あなた
あなた
何人かに言ったが、私も母も元々はただの村娘だ。家庭教師は……雇っては居ないが、字や言葉を教えてくれる者はいたからな
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
気になる所は多々ありますが、これ以上は聞かないでおきます。思っていた以上に複雑なご家庭らしいので
あなた
あなた
その方が助かる
てっきり私の弱点でも探る為、色々聞き出すのかと思っていたが、自ら引いてくれたので良かった。その後、上がる時間なのに気付き、アズールから「もう上がっていいですよ」と言われる。
あなた
あなた
先に失礼するぞ。
お疲れ様でした
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
んじゃ、また明日学校でね〜
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
お疲れ様でした
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
お疲れ様です
私はウエイトレスでは無いので、服は動きやすい運動着を着ている。荷物を持って更衣室で着替えた後、直ぐにオンボロ寮へと帰った。
明日はバイトはないが、一応どの日に入るかはアズールに既に紙を渡して知らせておいた。
あなた
あなた
(学校後のアルバイト、世の学生の大半はこんな感じで過ごしているのだろうか)

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