モストロ・ラウンジでバイトを始め、最初に皿洗いや物運びなどの仕事を任せられた。
後半、フロイドとジェイドに手招きされキッチンへ向かうと、作業台にはタッパーとモストロ・ラウンジの料理が数品並べられていた。
「アズールが?」と名前を口に出すと、本人が「そうですよ」と言いながらキッチンへやって来る。
返事をすると、フロイドが「小エビちゃんどれ持って帰る?」と聞いてくる。
テーブルに並べられているのはパスタ、サンドウィッチの類からデザートの類。
彼等の作る洋食ら見栄えが良く、美味しそうだ。
「では、有難く貰うとして……」と呟きながら、テーブルの上に置いてあったトングで持ち帰る物をとり、タッパーに入れる。
ジェイドとフロイドに言われ、「グリムは大食いだから炭水化物でお腹いっぱいになって貰おうと……勿論、他のも有難く頂こう」と誤魔化した。
ある程度貰った後は、念の為持ち歩いている袋にタッパーをしまう。
私自身特に自分を不幸だとは思わないが、周りからは意外そうな目、哀れむような目で見られたりする。何も、お金があって学校に行けて、家族がいるだけが“幸せ”とは限らない。それ等が無くても、自分を程々に満足させられたのなら、幸せなのではないだろうか。
人によっては、寝れるだけで幸せと言う者もいるだろう。明石国行が良い例だ。
「怠けられる時間があるだけ幸せですわ」とか適当なことを言っていた。
アズールもグリムと同じことを言うので、「お嬢様では無い」とハッキリ答える。
てっきり私の弱点でも探る為、色々聞き出すのかと思っていたが、自ら引いてくれたので良かった。その後、上がる時間なのに気付き、アズールから「もう上がっていいですよ」と言われる。
私はウエイトレスでは無いので、服は動きやすい運動着を着ている。荷物を持って更衣室で着替えた後、直ぐにオンボロ寮へと帰った。
明日はバイトはないが、一応どの日に入るかはアズールに既に紙を渡して知らせておいた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。