第9話

ぬくもり 2
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2023/10/31 08:42 更新
大量に舞い込む依頼は多種多様であり、未解決殺人事件から猫探しまで、もはや不可能、不可解などと言っている暇などない。

空いている時間に空いている方が調査に行き、それぞれの担当から大きく外れ、解明に時間がかかりそうだったら交代、という制度をとっている。

そのため、なかなか難解な密室事件や未解決、つまり警察が総力を挙げてもなお解決できなかった事件などは、不可解担当の倒理への負担が大きいのも事実である。

時計の針が頂点を越してから帰宅することなんてざらにあり、何なら最近は、死亡推定時刻に合わせて事務所を出ることもあって、下瞼の黒い影は濃くなる一方だった。


「…ただいま」


力ない声が玄関口に響く。

部屋から急いで迎えに出る。

激務が続いて約3週間、倒理はもう、疲労を全身から感じられるほどやつれて見えた。


「…おかえり、倒理。ごはん買ってきたけど、、食べれる?」

「…遠慮しとく、すまん」

「…そっか、お風呂入る?」

「…ああ、」


帰ってきて真っ先に倒れこんだソファーに吸い込まれそうな倒理はもう限界が近いようで、必死に抗おうとしてるが下りてくる瞼に負けそうになっている。

「倒理、お風呂はもういいからベッドで寝な。風邪ひくよ、免疫力も下がってるんだから。」

返事はない。心苦しいが肩を軽くたたいて起こす。

「倒理、倒理」

うっすらと、ゆっくりとその目に僕を映す。

「倒理、動ける?」

「…ああ、」

ゆっくりと立ち上がろうとソファーのひじ掛けをつかんで立ち上がるがそのまま前に倒れこんでしまう。
思ったよりも重症だ。

首筋に感じる倒理の額はほんのりとあったかくて。

「…倒理熱あるじゃん。」

「ね、つ」

とうとう言葉も通じないレベルで意識が朦朧としている。
病院に連れていくべきか…いや、とりあえずは一刻も早く休養を取らせるのが最適解だな。

鍛えていた、とは言いつつも背丈がある分抱えて運ぶのは難しそう。

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