放課後、私は思い切って一静を誘った。
自分から誘うなんて珍しいことだから、言った直後に心臓がドキドキしてしまった。
一静は少しだけ目を丸くしたあと、すぐに微笑んで、
とあっさり答えてくれた。
その落ち着いた声に、胸の緊張がふっとほどけた。
駅前のショッピングモールに着くと、一静は慣れた様子で店の中を見て回る。
私はただなんとなくで見ているだけだったけど、一静はきちんと私の好みを考えて選んでくれていた。
ひとつひとつ言葉を選びながら差し出してくれる一静を見て、胸が熱くなる。
「ほんとに、私のために真剣に考えてくれてるんだな」って。
試しに鏡の前でワンピースを当ててみると、一静は腕を組んでしばらく眺め、
と、迷いなく言った。
その瞬間、私は思わず笑ってしまった。
一静は、少しだけ口元を緩めながらそう言った。
その何気ないやり取りが、とても大切に思えた。
服を買い終えた帰り道、袋を自然に持ってくれた一静が、
と軽く言った。
私は「うん」と答えながら、胸がぎゅっと苦しくなった。
本当は、そんな未来がもう長くはないことを知っているから。
でも、彼の隣を歩きながら「次もある」と信じてみたかった。
8月28日
あと3日。
今日は、一緒に服を選んでくれてありがとう。
私なんかのために、真剣に「これが似合う」って考えてくれたことが、とても嬉しかった。
あの時、鏡の前で服を合わせて、君が迷いなく「似合う」って言ってくれた瞬間、私は少し泣きそうになったんだ。
それは、ただ服が似合うって言葉じゃなくて、「私自身」をちゃんと見てくれてる気がしたから。
一静は、いつも落ち着いてて、周りを支えてく れて、安心させてくれる。
私はそんな一静に、たくさん救われてきた。
今日、隣を歩きながら「また遊びに行こう」って言ってくれた言葉、本当に嬉しかった。
でもね……私はその「また」が、きっと遠くまで続けられないことを知っている。
もし私がいなくなったら、この日を思い出してほしい。
私が笑っていたこと、服を抱えて照れていたこと、全部覚えていてほしい。
それだけで十分だから。
ありがとう。
一静に会えて、こうして一緒に歩けたことが、私の宝物です。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!