第35話

8月28日 松川と服を選ぶ日
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2025/08/28 12:44 更新

放課後、私は思い切って一静を誘った。
あなた
ねぇ、今日、服買いに行かない?

自分から誘うなんて珍しいことだから、言った直後に心臓がドキドキしてしまった。

一静は少しだけ目を丸くしたあと、すぐに微笑んで、
松川一静
いいよ。俺でよければ、付き合う

とあっさり答えてくれた。
その落ち着いた声に、胸の緊張がふっとほどけた。

駅前のショッピングモールに着くと、一静は慣れた様子で店の中を見て回る。
私はただなんとなくで見ているだけだったけど、一静はきちんと私の好みを考えて選んでくれていた。
松川一静
これはどう?色は落ち着いてて、ちょっと大人っぽい感じ
松川一静
……うーん、あなたの下の名前にはこっちのほうが似合うかも。優しい雰囲気が出るし

ひとつひとつ言葉を選びながら差し出してくれる一静を見て、胸が熱くなる。
「ほんとに、私のために真剣に考えてくれてるんだな」って。

試しに鏡の前でワンピースを当ててみると、一静は腕を組んでしばらく眺め、
松川一静
うん。それ、すごく似合ってる。間違いない

と、迷いなく言った。

その瞬間、私は思わず笑ってしまった。
あなた
そんなに断言されると、なんか照れるんだけど
松川一静
事実だからな。自信持って着ればいい

一静は、少しだけ口元を緩めながらそう言った。
その何気ないやり取りが、とても大切に思えた。

服を買い終えた帰り道、袋を自然に持ってくれた一静が、
松川一静
今度、その服着てまた遊びに行こうな

と軽く言った。
私は「うん」と答えながら、胸がぎゅっと苦しくなった。

本当は、そんな未来がもう長くはないことを知っているから。
でも、彼の隣を歩きながら「次もある」と信じてみたかった。
8月28日
あと3日。

今日は、一緒に服を選んでくれてありがとう。
私なんかのために、真剣に「これが似合う」って考えてくれたことが、とても嬉しかった。
あの時、鏡の前で服を合わせて、君が迷いなく「似合う」って言ってくれた瞬間、私は少し泣きそうになったんだ。
それは、ただ服が似合うって言葉じゃなくて、「私自身」をちゃんと見てくれてる気がしたから。

一静は、いつも落ち着いてて、周りを支えてく れて、安心させてくれる。
私はそんな一静に、たくさん救われてきた。
今日、隣を歩きながら「また遊びに行こう」って言ってくれた言葉、本当に嬉しかった。
でもね……私はその「また」が、きっと遠くまで続けられないことを知っている。

もし私がいなくなったら、この日を思い出してほしい。
私が笑っていたこと、服を抱えて照れていたこと、全部覚えていてほしい。
それだけで十分だから。

ありがとう。
一静に会えて、こうして一緒に歩けたことが、私の宝物です。

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