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第1話

再来のゼリー
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2024/06/20 13:05 更新
ぱたぱたぱた。




天堂天彦
…………来ますね



姿こと見えないものの普段から聞き慣れていると本当的にその

足音の主が誰なのか必然的に分かってしまいますね。



いつ降りて来るのか気になり階段の方に目をやるとちょうど音

の主が降りて来た様です。



伊藤ふみや
あ、
天堂天彦
ふみやさんこんにちは。
伊藤ふみや
ん。



一方的な短い挨拶。それこそが一緒に過ごして来た中での最適

な距離。互いに無理せず過ごせるようなそんな雰囲気が心地

よい。



伊藤ふみや
お、あったあった。



ふみやさんが冷蔵庫からゼリーを取り出しました。さて、その

ゼリーは本当にふみやさんの物なのだろうか。私の記憶が間違

っていなければ数日前にテラさんが同じゼリーを冷蔵庫に入れ

ているのを見たような気がしますね。





もしそうだったら大人として注意しなくては。



天堂天彦
ふみやさん。そのゼリー誰の物ですか?
伊藤ふみや
え、わかんない。いただきまーす




ああ、食べ始めてしまいました。でもまだ引き返せます。です

がきちんとダメなものはダメと教えてあげないと。彼の為でも

ありますからね。




天堂天彦
ふみやさん、そのゼリーの入れ物に文字とか書いてありません?単語とか
伊藤ふみや
んー、あこれテラのだったんだ。



やっと気づいていただけました。次は反省ですね、この調子で

いくといいんですが。




テラさんにはきちんと謝ってお詫びとしてまたゼリーを買わな

いといけませんね。



伊藤ふみや
さすがテラ。このゼリー高級そうだもんな。
天堂天彦
………………はぁ



1歩進んで3歩下がってしまった。これはもう自分がきちんと話

さなくてはならない様ですね。



天堂天彦
いいですか、人のものは勝手に食べてはいけません。
伊藤ふみや
だめ?なんで?
天堂天彦
あのですね…………



またこれだ。ふみやさんは人に注意されるごとに

『だめ?なんで?』

と返す。まるで善悪の区別がつかない子供の様な言動である。



彼は正邪のカリスマですからね。



さて話の続きをしよう。



天堂天彦
人の物はその人が働いたお金で買った物なんです。人が買ったものを勝手に食べることは盗みとどうぜ…………


盗みと同然。そう言葉を紡ごうとした途端、口に柔らかいなに

かが詰められる。ほぼ条件反射の様に咀嚼し始めて柔らかいな

にかの正体がゼリーだったことに気がつく。




ん?ゼリー?



伊藤ふみや
はは、間抜け面。
天堂天彦
はひふるんへふは!何するんですか
伊藤ふみや
なんか色々うるさかったから天彦も共犯ね。うわ、人のもの食べた。良くないー
天堂天彦
全く…………



ああ、いつものふみやさんのペースに呑まれてしまいました。

こうなったらもう許す以外の道が閉ざされてしまう。




そしてまた、
天堂天彦
今回だけですよ


何度目か分からない許しを彼に与える。

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