第33話

続編 #3 支えるために
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2025/10/12 08:00 更新

秋も深まり、少しずつ涼しくなり過ごしやすくなってきた10月中頃。

なぜか、呼び出しをくらっていた。

あなた
いやさぁ、私なんかしたっけな…?

定時前に部長室ね、と言われ3時を過ぎたあたりからずーっとそわそわしている。

今日は収録もRECもないのでフリー。
雨小路は午前に葛葉さんのボイス収録があったらしく、今は雨小路とお話中である。

雨小路玄
俺の覚えの中では、ないね
あなた
無いよね!?
あなた
怖いんだけど……
雨小路玄
…ま、俺は知ってんだけどさ
と、ここで雨小路が爆弾発言。
聞いても教えてくれないことは分かっているので眉を顰めて怪訝さを表現。
……効果ナシ。

雨小路玄
…ま、そんな重大なことでもないよ
叶のことも踏まえて、の話だから
雨小路玄
緊張することない
あなた
…そう?
じゃあ緊張しないでおこっと
雨小路玄
まだ籍入れてないんでしょ?
あなた
うん、お互い忙しくて
雨小路玄
今月中には入れれるようになるからさ
雨小路玄
さ、部長室行ってきな
あなた
はぁーい、行ってきます





桜庭萌雲
蒼井先輩絶対緊張してますよ
部長に呼びだしなんて…怖すぎ
雨小路玄
…大丈夫だって、蒼井だもん


なんて会話は、緊張して耳に入っていない。

緊張しなくていいと言われたものの心臓が今にも口から飛び出そうなのである。



あなた
失礼しまぁーす……

部長室の扉をあけて椅子に座っている部長と目が合った。
「こっち」と手招きされて、対面の椅子に座る。

桜庭マネジメント部部長
ごめんね、忙しい時期なのに呼び出しちゃって
あなた
いえいえ、そんな
あなた
話、っていうのは…?
桜庭マネジメント部部長
…あなたの、蒼井あなたの下の名前さんの人事異動が決まりました。

あなた
え!?
桜庭マネジメント部部長
これから、叶さんのマネージャーは雨小路に任せます。
桜庭マネジメント部部長
蒼井さんは、再来週の月曜日から総務部で働いてもらいます
桜庭マネジメント部部長
よろしくね
あなた
え、葛葉さんのマネージャーって…
桜庭マネジメント部部長
そっちも雨小路がやるわ
桜庭マネジメント部部長
忙しさと、関わりなどの関係で、決まりました
桜庭マネジメント部部長
納得いかないところがあるかもしれないけど、よろしくね
あなた
...了解です


部長室の扉を閉めて、廊下を歩きながら目が滲む。
悔しさと、なんとも言えない責任感と、謎の杞憂。
叶さんのマネージャーから外された悔しさ。
女は結婚したら降格するんだ、みたいな昔の思想。
総務部で働く、と言う事実への緊張と、頑張らないといけないという責任感。
雨小路は、大丈夫なのだろうかという杞憂。

あなた
っ、はぁ...

部長室に行く前、雨小路が言ったセリフを思い出す。
「まだ籍入れてないんでしょ?」
「今月中に入れれるようになるよ」
と。

忙しくないのが嫌なんじゃない。
こういう、マネージャーとライバーっていう距離感だったから、私たちは...


あなた
...焦ってる?


なにに?どうして?
私は、叶さんと籍を入れたい。
それは事実。

私、なにに焦ってるの?



その日は、なんだか家に帰れる気がしなくて、雨小路に体調悪くなった。と伝えてカバンを持ってネカフェに向かった。自分の気持ちと、頭の整理が追いつていなかった。

総務部へ行くことは、悪いことではない。むしろ、出世。
でも、7年居続けたマネジメント部から、おい出されたような、虚しい気持ちになるのはなぜなのか。
担当になった叶さんのマネージャーをたった二ヶ月ちょっとで降ろされる、悔しさ。

これは恋愛どうこうの話じゃなく、私の立場の問題だった。


総務部は在宅ワークが多い。
結婚する人には優良すぎる物件。





ネカフェの部屋に入ったと同時に、スマホが振動する。電話だ。液晶には叶さんと映っている。

あなた
はい、もしもし
『あっ、あなたの下の名前さん!?
 あ、あの、マネージャーじゃ、なくなるって聞いた...』
『違う人の、マネージャーになるの?』
あなた
...ううん、違います。
総務部に異動、です。
『あぁ、そういうこと...』
あなた
...悔しいんです。
降ろされたこと
あなた
マネージャー、続けてたかった
あなた
でも、在宅ワーク、増えるので
叶さんといる時間は伸びます
『...うん、僕も、嬉しいよ』
『...来週中には、荷物まとめてそっち行くね』
『婚姻届も、一緒に』
あなた
...はいっ!

彼はつくづく、喋るのが上手いと思う。
誰かを癒し、引き込ませる。
愛でてくれるような、声の持ち主。

彼と喋ったら傷もへっちゃら、みたいな。
悲しいことも悔しいことも、忘れられる。

君といれば、この先もずっと。
幸せになれる。







次の日、私は会社を休んで叶さんの家に向かった。
もちろんアポはとってある。

チャイムを鳴らすと、インターホンから眠そうな叶さんの声が聞こえてきた。

あなた
こんにちはー、来たよ
『あいてるよぉ……』
あなた
ふふ、眠そう
お邪魔しまーす

玄関で靴を揃え、突っ立っていると
キッチンで手洗って〜
と眠そうな声が聞こえてきた。
リビングに行くと叶さんはソファで
スマホを触っていた。
あなた
おはようございます

おはよぉ

荷物を置いてキッチンに向かい
石鹸でごしごし手を洗う。
あなた
朝ごはん、食べました?
ううん、まだ
Uber頼む?
あなた
いえ、作ります

水道のレバーをキュッと下げ
棚を見回す。

食パンで簡単に作るか
凝ったもの作るか...
ホットミルクも飲んで欲しい。
あなた
パパッと作っちゃいますね
待っててください
はぁーい

食パンを一枚取り出す。
コーンとマヨネーズをかけてトースターにイン。
ダイアルを4ところに合わせる。

冷蔵庫から牛乳を取り出し耐熱らしき
コップに注いでオーブンレンジに入れる。
こちらは1分30秒。

焼けたトーストをお皿に乗せる。
ホットミルクにはスプーン一杯分はちみつ
を入れる。

お盆に乗せて、リビングテーブルに
置く。

あなた
できました。
めしあがれ
うわぁ、美味しそう
いただきまーす


数時間して、洗い物も終わり
一緒に洗濯物を干してからリビングでくつろぐ。
部屋にはいくつかの段ボールがおかれ、
引っ越しの準備を始めているんだな、と分かる。
あなた
引っ越しのお手伝い
忙しかったら呼んでね
うん、でも大事なのって言ったら機材くらいなんだよね
あなた
あ、確かに
しっかり包装しないと壊れちゃう
プチプチ集めてこつこつやってるよ
あなた
...あの、叶さん
あなた
昨日した話で
あなた
...私、叶さんのマネージャーし続けてたかったです。
...うん、僕も
あなたの下の名前さんがマネージャーでいてほしかったよ。
あなた
マネージャーは、雨小路が葛葉さんとまとめてやるらしいから、そこは安心かもなぁ
あなた
...お家で、叶さんのことしっかり支えるね
うん、ありがとう


同棲生活まで、そう遠くない。
その未来へ足を進める。

叶さんの綺麗な顔を見つめ
目があってへにゃりと笑って
幸せな日々を実感していく。





あとがき


続編、お楽しみいただけましたでしょうか。
今後の番外編を書くにあたっての基盤作りだったかなぁと思います。
最近日常生活でびびっとくるような出来事がなくつまらないと言うとアレですが、なにも思いつきません。
筆が進まない。
うぅ、と嘆きながら番外編をちまちま書いたり短編をちまちま書いたり新作をたまたま書いたりしています。
でもどうしても筆が止まる...
頑張って書きます。
月一で番外編出してる方も、計画練って出さないとなぁと思っています。
忙しいのに、忙しくない。
びびっとくるものが書けない。
辛い状況ながら頑張っています。
次の投稿がいつになるかはわかりませんが、よろしくお願いいたします!
では!!




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