大いに盛り上がった打ち上げ。
20時を過ぎた辺りで、お開きの流れになって。
帰る方向が分かれる交差点で、
クラスメイト達に笑顔で手を振る。
隣には、もちろん梨央が居て。
彼も、楽しんでくれたようだった。
一気に静かになった帰り道を2人、歩いて居ると。
不意に、心配そうな彼の声が聞こえて。
思わず横を向いて、その顔をまじまじと見つめる。
気付かないでくれた方が有難い事だって、時にはあるのに。
彼は私の違和感を見逃せないようだ。
最初は彼の言葉を止める為に。
途中からは自分自身にも暗示を掛けるように強く。
声と瞳に力を込めれば、
梨央は不満そうな顔をしながらも押し黙る。
私なんかの為に、彼が傷付くなんて耐えられないから。
.....ずっと、守られて居て欲しいのだ。
過保護過ぎる事なんて、とっくの昔に自覚して居ても。
彼が家の中に入ったのを確認して、私も自宅に帰る。
最初は伸び伸び使えて良いなと思った
この家も、慣れてくると1人暮らしするには広すぎて。
案外、寂しかったりする。
誰かと居る時は感じない孤独から、身を守るように。
やるべき事を済ませて、布団に潜り込んだ。
.............................。
___翌朝。
私にしては珍しく、梨央が来る前に目が覚めた。
アラームすら鳴る前だと言う
今までに無い快挙に、少し興奮しながら。
スマホから母の番号を見つけて、素早くタップする。
___♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜
数回のコール音の後で。
電話が繋がり、声を掛けると。
慌てふためく母の声が、耳に入って来た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!