第6話

ep.1 真逆の共通点-4
55
2025/11/28 12:55 更新
徒歩で言うと少し遠めの銭湯。

ここは知らない人ばかりだから、少し気が楽だ。
 
クラスメイトに家の事情を知られたら、おそらく俺のスクールカーストは地に落ちるだろう。
緑間 圭
⋯⋯知らない人ばかりの方が案外いいのかもな
⋯⋯そういえば今はNakamuが近くにいない。

いつもの癖で話しかけようとしてしまった。

⋯⋯⋯⋯ちょっと疲れてるのかもなぁ、俺。
緑間 圭
はぁ⋯⋯⋯⋯⋯
お湯に浸かるだけでも体が軽くなった。

汗も流れて、なんだか少し気が紛れたような気がする。
Nakamu
圭、さっぱりした?
緑間 圭
うん
Nakamu
あ、髪まだ乾かしてないよね?
緑間 圭
そうだけど
Nakamu
乾かしてあげる
緑間 圭
うん⋯⋯
緑間 圭
⋯⋯ん?!
今なんて言った?髪を「乾かす」って?
ぬいぐるみにそんな事が出来るわけ無いのだが。
Nakamu
周りに誰もいないよね⋯⋯?
見渡すと、確かに今は俺とNakamuしかいない。
Nakamu
よしっ⋯⋯⋯ほっ!
緑間 圭
バッグのストラップが揺れ、マスコットがふわりと浮き上がる__

























__その瞬間、誰かがそこに居た。
目にかかった茶髪。

水色の瞳。

パンダを模したパーカー。
緑間 圭
⋯⋯⋯⋯Nakamu?
Nakamu
あの日以来だよね?
そういえば、昔初めてあなたの呼ばれたい名前と会ったときもこんな姿だった気がする。
Nakamu
乾かしてもらうことなんて滅多にないでしょ
緑間 圭
まあ、うん
そんな経験があるのかも怪しい。
Nakamu
⋯⋯そこ座って
緑間 圭
⋯⋯ん
暖かい風に首元を撫でられる感触。
Nakamu
折角だし髪の毛梳こうね〜
なんて言ってんだろう。風の音で聞こえない。
でも、けして悪いことでは無いのだろう。
こうして髪を梳いてもらうのは嫌じゃないと思う。
緑間 圭
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
心地良いとはこういう事なのだろうか。

今はただ、Nakamuの手に委ねていたいと感じる。
帰路につき、二人で歩く。
緑間 圭
Nakamu、大丈夫?
Nakamu
うん。今は誰も見てないよ
普通の人にはこの姿のNakamuは見えないので、周囲には細心の注意を払う。
Nakamu
⋯⋯圭、どうしたの?
緑間 圭
えっ?
Nakamu
最近、上の空なことが多いでしょ
緑間 圭
⋯⋯そう、なの?
Nakamu
うん
知らなかった。そんな事気にも留めていなかった。
Nakamu
⋯⋯⋯⋯あなたの呼ばれたい名前のこと?
緑間 圭
はっ⋯⋯!?
なんで今あなたの呼ばれたい名前の名前が出てくるんだ⋯⋯⋯?
Nakamu
ふぅん、そうか⋯⋯此奴ら⋯⋯
緑間 圭
なんて⋯⋯?
Nakamu
いや、何となくそうかなって
緑間 圭
⋯⋯⋯⋯あなたの呼ばれたい名前がそんなに俺に影響はしないでしょ、俺とは格が違うじゃん
Nakamu
うーん⋯⋯まあ、そうなの⋯⋯か⋯⋯?
緑間 圭
それに今あなたの呼ばれたい名前は関係ないし⋯⋯
Nakamu
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
Nakamu
(⋯⋯二人とも気づいてないけど、多分お互いに好きなんだろうね)
家に近づく度、足取りは重くなる。
緑間 圭
⋯⋯⋯⋯帰ったら、自主勉か⋯⋯
眠れない日はノートに逃げるしかない。
Nakamu
⋯⋯あのさ、勉強ばっか疲れない?
緑間 圭
ん⋯⋯?いや、わからない
Nakamu
⋯⋯⋯⋯そっか
よくわからない。

食べたいもの、行きたい場所、したい事____全てが無だ。
そのお陰で勉強は沢山できるけど。
Nakamu
ねぇ、圭
緑間 圭
ん?
Nakamu
今日は夜更かししない?
緑間 圭
え⋯⋯⋯⋯
Nakamu
俺みたいな人外は人目につかない夜の方が動きやすいからさ
折角遅くに外に居るんだし、と彼は言う。
緑間 圭
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
俺はどうしたいんだろう。

でも、足が重くて帰ろうとしても息が詰まる。
    




ふと、彼が口を開く。
Nakamu
⋯⋯あの日あなたの呼ばれたい名前が圭のところに来たみたいにさ
緑間 圭
 
  

















Nakamu
圭も会いに行ってみない?

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