第124話

呪いの王.
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2023/06/16 14:47 更新
茶色のまつ毛がそっと持ち上がって撫子色の瞳が姿を現す。

ゆったりとまつ毛が上下に動いてから、上半身が起こされた。

あなたが目覚めたことに気がついたロボットがリカバリーガールの元へと報告に行く。

少ししてリカバリーガールがやって来て、体調や意識など軽く質問をされる。

一度落ち着きたいと告げて保健室を出た。

もちろん寮にはクラスメイトがいて、あちらこちらから心配の声が上がる。

半ば逃げるように返事をして自室へ戻ると、後ろから恋人が着いてきていた。


「部屋入れろ」

「1人にさせて」

「話したいことがある」

「……チッ」


あなたは舌鼓を打って乱暴に扉を開き、爆豪を部屋に招き入れた。

爆豪はあなたの野蛮な振る舞いに違和感を覚える。

部屋に入ってからあなたはベッドに腰掛けて足を組んだ。

その行動に、またもや爆豪は不自然さを感じる。


「……お前、本当に桜羽か?」


あなたは扉の前で立ち尽くす爆豪を下からギロりと睨む。

そして大きくため息をついて、自慢の指通りのいい髪をぐしゃぐしゃと掻きむしった。


「どの世界にも忌々しい小僧がいるものだ」

「は……誰だお前」

「頭が高いな」


あまりの威圧感に、流石の爆豪もびくりと体を硬直させる。

つう、と冷や汗が垂れていくのを感じ、あなたから目が離せない。


「俺を見下すな。不愉快だ」


ギッと小さくベッドを鳴らしてあなたは⎯⎯⎯⎯呪いの王は、立ち上がる。

爆豪の正面まで足を運び、退屈そうに爆豪の表情を眺める。


「この間、桜羽あなたに術式を見せられただろう」

「は……術式?」

「影に手を入れただろう。術式とはそれのことだ。そして、俺はその類」


少ししてようやく「誰だ」という問いの答えだと気がついた爆豪は、歪んだ顔のまま再び問う。


「……その類ってどういうことだ」

「ハァ……桜羽あなたから聞いていないのか。この世には人間の肉身から溢れた負の感情が実体化した呪いというものがいる。そして相手を呪う力が呪力。呪力による特殊能力のことを術式と言う。俺は呪いだ」

「ハァ? お前がその呪いってヤツなら、ンで桜羽になってンだよ!」

「俺の術式が此奴に模倣されているからだ」


模倣、確かB組にも個性をコピーできる個性をもつ者がいたなと考える。

桜羽もそれと同じなのだろうか。


「心配せずとも、俺の術式の主導権は桜羽あなたが握っている。しかし当の本人は今憔悴している。理由はお前でも分かるだろう」

「……昨夜までの夢遊病の症状と、寝不足」

「あぁそうだ」


爆豪は、あからさまに見下された表現に苛立ちを覚えつつも抑える。


「桜羽あなたの、周りの有象無象に心配をかけたくないとかいう私情で俺が代わりに身体を動かしているというわけだ」

「…………」


初めて聞く話をゆっくりと噛み砕いて理解していく。

そして、いくら爆豪と言えど彼女であるあなたの様子が気になってしまい、むずむずしながら視線を泳がす。

爆豪はあなたに関してかなり丸くなった。


「言いたいことがあるならさっさと言え、小僧」


呪いの王はあなたの姿のままドカッと爆豪の背後の扉を蹴った。

いわゆる足ドンというやつだ。


「…………桜羽は、どんな感じなんだ」


呪いの王は一瞬きょとんと目を瞬かせ、ニヤリと笑みを浮かべた。


「そうだったな。お前ら恋仲か」


じわじわと爆豪の顔が羞恥に染まっていく。

キッと目がつり上がって、唇を噛んだ。


「桜羽あなた本人ですら明確には覚えていないことを教えてやろう。彼奴は悪夢を見ている。自分の世界での仲間から罵倒される夢だ」

「それで、病んでンのか」

「そのようなものだ。先程も言ったように、彼奴は夢の内容をしっかり覚えている訳ではない。だからこそ得体の知れない不安を抱えている」

「……俺は、どうすればいい」

「ケヒッ恋人のために、か。見かけによらず健気だな」


また爆豪の頬がじわじわ赤みを増すが、いつものように突っかかることはしない。

初めの態度は悪かったけれども現在の呪いの王は穏やかであって、爆豪は呪いの王を怒らせたらどうなるかを気配で察知しているからだ。

呪いの王は壁から足を離して腕を組んだ。


「彼奴は愛に飢えているからな。まぐわいでもしてみたらどうだ」

「まぐわ……ッ!」


ここまで言われては黙ってはいられない、とばかりに爆豪が吠え出す。


「ふざけんな!! おまッ、いつも見てンのか!?」

「なんだ、まぐわいの意味が分かるのか。まぁ心配せずとも桜羽あなたが俺の術式を展開しない限り外の様子は分からない。大体な」


まぐわい、つまりは性行為。

もしも呪いの王に見られていたとしたらかなり恥ずかしいが、実際は本人が言う通り見られていない。

爆豪はひとまずホッと息をついた。


「……さて、俺は彼奴に身体の主導権を戻すことができるが、どうする小僧」

「……チッ! さっさと戻せやァァ!!」

「ケヒッ!」


まるで今から性行為しますよ宣言を受けた呪いの王はベッドへと向かい、寝転がって目を閉じる。

次の瞬間聞こえてきたのは安らかな寝息だった。


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