ごめんね、こんな私とずっと一緒に居てくれて。
苦しくて嫌な所いっぱい見せたよね?
まだ歌、作っていたかったな。
あなたちゃんの歌声、ずっと近くで聞いてたかった。
死にたくないよ、怖いよ、あなたちゃんと一緒に居たいよ。
お願い神様、殺さないで。
嫌だ、怖い、助けて、死にたくないよ…
頭が痛い。
吐き気がする。
冷や汗が止まらない。
呼吸もしにくい。
朝食を作っていたママも、私の様子がおかしいことに気づき、病院まで車を飛ばしてくれた。
ここが病院であること、最も重い病気を持つ人たちがいる病棟だということを思い知らされるそんな光景。
ママが急いで看護師さんに話を聞きに走っていく。
視界が暗くなる。
耐えられない頭痛と吐き気。
今一番辛いのは結奈ちゃんなのに。
私がこんなのじゃだめなのに。
何も出来ない、代わってあげられない自分が悔しくて。
全身の力が抜けて、私はその場に倒れ込んだ。
ああこれ、知ってる。
おじいちゃんが死んだあの日も、ペットのクロが死んだあの日も病院の先生はそう言ってた。
なんで私の好きな人は皆、私の前から居なくなっちゃうの。
ママはいつも通り優しく、微笑みながら話す。
でも結奈ちゃんに触れる手はすごく震えていて、今にも泣きそうな顔をしている。
私はどんなことを言えばいいんだろう。
私には何が出来るんだろう。
ベッドに血が飛び散る。
看護師さんたち、お医者さんが急いで入ってくる。
涙を流しながら結奈ちゃんが呟く。
ママも看護師さんもお医者さんも悔しそうに顔を歪めていた。
私はもう、何が起きているのか分かっていなかった。
でもこれだけは伝えたい、言わなきゃダメだ。
届け、届け届け届け!!!
私は大きく息を吸った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!