ダメだ、声が出ない......。
私は急いで青葉の元へと駆け寄った。
どうやら、
青葉は心臓の辺りを刺されてしまったみたいだ。
出血は止まる様子はなく、
じわじわと青葉の服が赤く染まっていくのがわかる。
彼は、今にも消えそうなくらいか細い声でそう言う。
どうしてそこまで優しいの...?
自分が死にそうなのに、
どうして他人のことを想えるの...?
お願いだから、今は自分を第一に考えて...
青葉が死んだら、私はどうすればいいの...?
まだ、私の想いも伝えられてないのに...
神様、
どうしてこんな悲しい結末を彼に与えたんですか...?
彼が何したって言うんですか...?
お願いだから死なせないで...っ...
そんな私の切実な願いを、
神は聞いてくれる訳もなく、
青葉の呼吸がどんどん浅くなっていく。
私もだよ、青葉。
その言葉を口にする前に、彼は息絶えた。
それと同時に、
私の頬を伝って止まなかった涙が引いた。
青葉が息絶えた今、悲しみよりも先に、
怒りの感情が湧き上がってくる。
自分から刺しておいて、何を言ってるんだろう。
元はと言えば、全部お前のせいなのに。
私の中の怒りが、徐々に殺意へと変わる。
許せない...許さない...
今にも爆発しそうな感情を抑えようとしたが、
勝手に口が開いて、そう言っていた。
あぁ、もう止まれないや、青葉。
いいよね、だって、あいつが悪いもんね。
なんで謝ることすらしないんだろうか。
自分だけど、自分じゃないみたいで呆れるわ。
ダメだ、何言ってもこいつ分からないんだ。
てか、青葉死ぬほど辛い思いしたのに、
ただ言ってるだけじゃ全然仕返しにならないよね。
あ....わかった。
じゃあ殺しちゃえばいいんだ。
私は青葉に刺さっていたナイフを優しく抜き取る。
私はナイフを握りしめ、
あいつの元へとゆっくり歩く。
私の気持ちを表すかのように、
止んでいた雨がまた激しく降り始めた。
あいつが青葉に視線を向けた瞬間、
私はあいつの心臓をナイフで刺した。
あ、やっと死んだ。
あいつが息絶えたとともに、
私にも激しい痛みが襲ってきた。
私は青葉の隣に倒れる。
あぁ...これで青葉とまた会える...
意識が遠のいていく...これが死の間際の感覚か...
そんなことを考えていると、
走馬灯のように美波や風真、
純恋ちゃんのことを思い出した。
あの子たち、私と青葉のこと大好きだからな...
もしかしたら死んじゃうかも...?
そんな根拠もないようなことが浮かんだ。
一応、最後に皆にメッセージでも残すか。
私らしくない提案だが、
青葉だったらこうするだろうと思ったため、
2人からの言葉として書いておくことにする。
私はもう力が残っていない指に自分の血を付けて、
ダイイングメッセージのように文字を書く。
「生きろ」
こんなことを。
美波や風真に効くかどうかはわからないけど、
純恋ちゃんにだけは効いて欲しいなぁ...
効いてくれることを信じながら、文字を書き終えた。
視界が白くなっていく。痛みももう感じない。
もうこの世とはさよならだ...。
少し名残惜しいけど、じゃあね。
美波、風真、純恋ちゃん、煉くん。
そして青葉のお友達も。
...来世でまた、会える日まで。
翌朝...6月14日 (土曜日)
〈羽田家〉
お母さんに起こされ、私はリビングへと移動した。
テレビからはいつも通り、
朝のニュースが流れている。
母はテレビを指さしてそう言った。
なんでうちの学校がニュースに...?
そう思いテレビを見ると...
そんな声とともに映し出された映像には、
〈〇〇高校の男女死亡〉と書かれたテロップと共に、
見覚えのある2人の写真が映し出された。
...どうして...?2人とも死んでしまうなんて...
そんなのあんまりじゃない...
やっと莉音先輩とも仲良くなれたのに...
もう、死にたい....
そう思った瞬間に、
アナウンサーの言葉が頭に響いた。
「生きろ」
前にも似たようなことを、
莉音先輩に言われていたのを思い出した。
これは、私に向けてのメッセージだろうか...?
そうだとしたら、私は...
死ぬ訳にはいかないじゃない。
私は莉音先輩と青葉先輩の分まで生きるんだ。
...生きなきゃいけないんだ。
見てて、莉音先輩、青葉先輩。
...私だけは、絶対死なないから。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!