ケイは教室の扉を開け、あなたを中へ通した。
あなたが来たことで、中にいた全員が彼女の方を振り返る。
生徒会には基本的になにか決まった仕事がある訳ではない。しかしだからといって暇な訳ではなく、常に書類対応や学校行事の対応に追われているのだ。
書類には今後の行事まとめがプリントされていた。それに間違いがないか、銀星が確認している。
この学園では軽音部、ダンス部、演劇部、バンドチームの、一般にも向けての公演会が開かれている。
そして特別ステージとして生徒会も加わり、公演を行っているのだ。
また訳の分からないことを言っているケイに、あなたは当然意味も分からず苦笑いをした。
今も仕事があるのに部活見学をしたりなど、彼女優先な所にはあなた自身も不思議に思っていた。
どうしてケイがそこまで優しくしてくれるのか、何故あなたのことを知っているのかも分からない。
聞いた所で、どうせ彼は答えてはくれないのだから。
周りが仕事をしている横で、見てるだけにはいかないとあなたは思ったのだ。
ケイはギィに、あなたが座れる椅子を持ってくるよう指示した。
ギィが椅子の背を持ち、彼のその真顔に圧を感じ、あなたは引けずに座るしかなかった。
それでもあなたは、一人だけゆっくり休むということに罪悪感があった。
あなたは、黙って生徒会の仕事を見てることにした。
自ら見学を希望した彼女だが、もっと余裕がある時に来れば良かったと後悔もした。
どうするべきか悩んでるあなたの肩に、ソテツが手を置いた。
ニヤニヤしてるソテツを見たあなたは、彼が何か企んでる、もしくは面白がっているのだと確信した。
ソテツがあなたとの距離を詰め、彼の顔が彼女の目と鼻の先まで迫っていた。
ソテツのとてつもない低音ボイスに、あなたは顔が熱くなる。しかしそれをケイが許すはずもない。
口では怖いと言っても、当の本人は笑っている。そんな彼に、あなたは相変わらずだと感じた。
悪びれもないソテツを、ケイはじっと睨んでいる。
今のケイに、ソテツの冗談は通じないようだ。今も、彼はソテツを睨みつけている。
あなたが呆れていると、吉野が割って入った。
吉野は仕事をしない彼に、頬を膨らませた。
ケイは軽く頷き、再び書類に目を通す。
ダンス部は、モクレンが二年間抗議した結果の末にできた部活だ。
まだ知れ渡るまでに時間がかかると思っていたが、ダンス部の結果は目まぐるしいものだった。
あまりよく分かってないギィに、夜光は「もちろん」と答えた。
今度は近くにいた吉野が答える。
ソテツの質問に、ギィは少し困ったような顔をした。
自分の意思で公演を行いたいとギィが言ったので、その場にいる全員が彼の成長を感じていた。
ケイが容赦なくギィの要望を断ったので、あなたが少し注意をしようとした。
ケイも、ギィの成長を感じて配慮をしたようにそう言った。
それでも、あなたとギィは嬉しそうだった。
そこでソテツは頭を軽く搔き、大きなあくびをした。
ソテツの返答に、吉野は呆れた。横にいるソテツにあくびをされると、吉野にも移ってしまう。
そこでソテツは、あなたに悪い顔をして見せる。それにあなたは、何かイヤな予感を感じた。
ソテツが冗談なのか、本気で言っているのか分からないあなたは、曖昧な返事しか出来なかった。
そのことにケイは否定しなかった。彼もあなたに、生徒会へ入って欲しいのだ。
吉野の注意に対し、ソテツはため息をついた。
ギィもあなたのことを勧誘したので夜光は少し唖然とした。
ギィはあなたの手を取って優しく握る。彼の手は少しひんやりしていて、握られているととても心地が良かった。
ギィの少し寂しそうな表情と距離の近さに、あなたは顔を赤くした。
質問攻めのギィに、あなたは首を横に振った。
ギィが中々離してくれないので、あなたは困り果てている。するとケイがギィを止めようとした。
するとギィは、あなたの手を離した。
困ってるのは事実だが、ギィに面と向かって言われればあなたも首を縦には振れない。しかし彼女にとって勧誘してくれるのは嬉しいし、迷惑など思ってはいない。
ふと、吉野が外を見ると、空がうっすらと暗くなりかけている。
あなたは二回お礼を言って、深く頭を下げた。
銀星がそう言うと、ソテツが彼の肩に腕を置いた。
あなたは扉の前でもう一度会釈をし、生徒会を後にした。
あなたは寮に帰った後、一人ベッドの上に仰向けに寝転がっていた。
あなたは目を閉じ、しばらく考えてから目を開けた。


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。