弥海は一個上の先輩だった
高専で唯一真面目に丁寧に対応してくれたのを覚えてる
人数が少ない分、縦の繋がりも強かった
でも、上下関係は強い人たちが多かった
特に男の先輩なんかいつの時代の人間だよ、って感じの人もいた
その中で唯一、“後輩”として接することができたのが弥海だ
二人で当たる任務も多くて自然と仲は良くなっていった
タメだったけど、さん付けだった
その日は、弥海が同級生を同時に失った日だった
弥海にしては珍しくヘラヘラと笑っていた
心配をかけないようにしようとしている姿に逆に心配してしまう
私の代は一人で、弥海の上は男尊女卑が強かったから普通に話せるのは二人だけになった
たぶん弥海って呼ばないと弥海さんがどこかにいってしまうと思ったんだ
弥海の代もやっぱりいい奴らとは言い難かったけど、弥海にとって
一緒に入学して
同じ授業を受けて
一緒に任務に行って
喜怒哀楽を分かち合って
時に喧嘩して
一緒に卒業して
一緒に大人になりたかった人たちなんだ
弥海は一人の先輩のことがたぶん好きだった
言われたことはないけど、見てたらわかる
特に何かしてるってわけでもないけど、ああ、他の人たちとは違うんだろうなって感じだった
その彼が言ったから
情報が入って駆けつけて、最後に聞いた言葉だから
きっと弥海の心にも響く
彼が、
彼が、
実は呪詛師で、みんなを殺したのは彼の仕業だと、
そんなこと言えるわけがない














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!