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翌日。
私はスマホ画面を見つめていた。
昨夜、仁人さんと連絡先を交換した。
そして初めてやり取りをした。
とはいっても、内容は契約の事についてばかり。
まだ友達同士のように気軽には話せない。
それでも、連絡をするのが少し楽しかった。
そんなことを考えていると、スマホに通知が届いた。
吉田 『おはようございます。』
『おはようございます!』
吉田 『今日、雑誌の撮影があるんですけど良ければ来ませんか?』
私はしばらく画面を見たまま考えた。
私なんかがお邪魔じゃないだろうか。
そんな考えが頭を通る。
少し間が空いてから、続けてメッセージが届く。
吉田 『無理にとは言いませんのでどちらでも大丈夫ですよ』
『邪魔にならないのであれば、行きたいです』
吉田 『待ってます。』
私はスマホを置いて、鏡を見た。
「...。」
今日は何を着ていこう。
そう思った。
いつもなら、こんなに悩まない。
男女受けどっちもいい服を着て、人並みにおしゃれして。
ただ撮影を見に行くだけなのに、
変に気合いを入れる必要なんてないのに。
「...これとか、?」
奥に閉まっていたいつもは着ない系統の服を取り出した。
いつも上げてる髪も、今日は下ろすことにした。
私は、自分でも少し不思議だった。
「...普段通りでいいのにな。」
そう呟きながら、靴を履いて玄関を出た。
撮影現場に到着すると、すでにスタッフは忙しそうにしていた。
「あ、あなたの下の名前ちゃん!」
塩﨑さんが最初に気づいて駆け寄ってくれた。
「お疲れ様です」
「お疲れ様!来てくれたんや!」
「仁人さんに誘っていただいて。」
「そっか!」
塩﨑さんは嬉しそうに笑って言った。
その近くに居た、佐野さんも私に気づいてこっちに来る。
「昨日ぶり」
「お疲れ様です」
「今日は見学...?」
「はい、たぶん...。」
「たぶん?」
「私も、どういう感じなのかよく分かってなくて。笑」
私がそう言うと、塩﨑さんが話し始めた。
「あー、吉田さん説明足りひんもんなぁ。
まぁ大丈夫やろ!」
「はい、笑」
その時、スタッフから声がかかる。
「吉田さん、塩﨑さんお願いしまーす」
「あ、行かんと。じゃあ見といてな!」
「はい...!」
二人はすぐにスタッフの元へ向かった。
私はその背中を見送った。
「...仁人、すごいよね」
隣から佐野さんの声がした。
「...?」
「カメラの前に立つと、顔つきの切り替えがすごいからさ」
「...ほんとだ、」
「本人はそのつもり無さそうだけど。笑」
私は仁人さんを見る。
撮影中の仁人さんは、真剣な表情をしていた。
普段の穏やかな笑顔とは違った。
「仁人さんって、普段からああいう感じなんですか、?」
「どんな感じ?」
「真面目というか。ちゃんとしてるというか...」
佐野さんは考えるように鼻を触った。
「昔からそうかも」
「そうなんですね...」
「ヒットしてからもっとそうなった気がするけど。
あーでも、仁人も最初からなんでも出来たわけじゃないよ」
「そうなんですか、?」
「うん。仁人だって、普通に悩むし落ち込むし、変に頑固だし。笑」
「...意外です」
「でしょ。笑」
「はい。笑」
私は思わず笑った。
その時。撮影の合間の仁人さんと目が合う。
仁人さんは少し目を細めてから、私に笑いかける。
私もつられて笑った。
「...ぇ」
佐野さんが声をもらしたように言う。
「...どうしました、?」
「いや、仁人ってあんな顔するんだって思って。」
「...ん、?」
「ごめん、なんでもない。」
佐野さんはこれ以上何も言わなかった。
しばらくして、撮影に一区切りついた。
吉田さんがこちらへ歩いてくる。
「撮影お疲れ様です」
「ありがとうございます。
退屈じゃなかったですか...?」
「全然!佐野さんが話し相手になってくれたので」
「そうなんですね。」
仁人さんは佐野さんの顔を見て言う。
「余計なこと話してないよね?」
「別に話してねぇよ。笑
ね、あなたの下の名前ちゃん。」
「えっ、はい...!」
「ほら。笑」
「ほんとかよ」
「...ってか、仁人...笑」
「なに?」
「いやなんでもない。笑」
私は二人の会話がよく分からないまま、佐野さんは行ってしまった。
撮影が終了し、家に帰ったのは20時。
仁人さんとは現場の中で何度か話した。
他のメンバーとも少しだけ話せて、仲が深まったみたいで少し嬉しかった。
その時、スマホが震えた。
吉田 『今日は来てくれてありがとうございます。』
『こちらこそありがとうございました』
吉田 『勇斗と何話したんですか?』
『内緒です!笑』
吉田 『分かりました笑』
吉田 『少しだけ気になりますが。』
私は返信を見て笑った。
「...まぁ、自分のことを話されてたって言われたら気になるよね。笑」
恋人を演じるために始まった連絡。
でもその夜。
二人は初めて、契約以外の話をした。
私は深く考えずにスマホを閉じて目をつぶった。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。