あなたは先ほどの言葉を取り消すように、
即座に大砲を生成した。
だが、照準はわずかに逸れている。
衝撃弾は、轟の横を掠め、建物の壁を砕いた。
一一 外した 。
自分で分かる。 今のは、当てられた。
轟は氷で足場を作り、一気に距離を詰める。
心臓が跳ねる。
だから、さらに――当てない。
砲撃は派手だが、致命打を避けている。
牽制、威嚇、時間稼ぎ。
轟は防ぎながら、眉をひそめた。
このヴィランの攻撃は、“ 精度が高いはず ” だ。
なのに――決定的な一撃が、来ない。
氷で動きを止め、炎で退路を断つ。
あなたは、砲身を下ろしたまま動かない。
轟は、一歩踏み出し、鋭く問いかけた。
その言葉に、あなたの肩がびくっと跳ねた。
一瞬、脳裏をよぎる本当の理由。
――かっこよすぎて、
――傷つけたくなくて。
あなたは、視線を逸らし、淡々と答えた。
嘘。
でも、もっともらしい嘘。
腕を軽く振り、誤魔化す。
轟は、その様子をじっと見つめた。
確かに、反動のある個性だ。
だが、それだけでは――説明がつかない。
あなたは即答した。
沈黙が落ちる。
その間も、二人の視線は絡んだまま離れない。
心臓がうるさい。
冷静でいなきゃいけないのに。
轟が構え直す。
あなたは一瞬だけ、彼を見つめて小さく笑った。
次の瞬間、煙幕代わりの砲撃。
白煙の中で、あなたは後退する。
まさかヴィランが、ヒーローに手を抜くなんて。
*
煙が晴れたとき、そこに彼女はいなかった。
轟は拳を握りしめる。
確信が、胸に残る。
あのヴィランは理由を隠している。
そして、その理由が
自分に向いているかもしれないことを
まだ、彼は知らない。
…Next











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!