パーティー当日。
七瀬からパーティーの招待を受けた鈴と結月は、制服以外の正装をする為に七瀬の暮らす新月堂に呼ばれた。
今回の3大桜の満開を祝うパーティーは、学園の行事ではない。
首桜様と桜姫、桜華殿と新月堂。
桜を守護する貴族たちの大きな祭りだ。
したがって、学園の制服では場違いになる。
首桜様や桜姫は各々に規定の衣装で正装するのだ。
もちろん、その招待客も普段着とはならない。
新月堂には桜姫の為の私服なども多数取り揃えており、女性が正装するにはもってこいの場所だ。
この国の正装は、和洋折衷で女性は和服に洋風なレースなどがあしらわれた着物ドレスが主流である。
桜姫は式典やパーティー用のドレスの中から選んで着るため、普段着の中から選んで着ても良いとのことだった。
普段着と言っても、ワンピースなどの上品なものばかりでドレスと言っても良い程のデザインばかりだ。
それぞれ服を選び着替える。
鈴が選んだのは、シンプルな白のワンピースだった。
Aラインの女の子らしいシルエットで、桜の刺繍が裾に入っている。
この国の装飾品は桜のモチーフが本当に多い。
鈴と結月は可愛らしいワンピースに身を包み、なんだか桜姫の仲間入りをしているみたいになった。
優しい七瀬と仲良くなり、まさか首桜様に会いに行けるなんて…と、期待と緊張でいっぱいだった。
3人は新月堂を出て、隣の桜華殿へ向かった。
会場に着くと、既にたくさんの招待客が集まり各々グラスや料理を手に取り話に花を咲かせている。
七瀬が歩く少し後ろを2人は付いていた。
会場に入り鈴と結月を案内する七瀬。
そこへ、彼女が視界に入るなり真っ先に声をかけた人物がいたーー。
予期せぬ招待客にドクンと鼓動を打ちながら驚いていたのは、七瀬ではなくその後ろにいた鈴だった。
まさか麗華もこのパーティーに招待されていたなんて思いもしていなかった彼女は、着飾って別人のような麗華の突然の姿に身構えた。
突然の麗華の失言に腹を立てた結月は、つい大きな声を出してしまっていた。
それを聞いていた人物が、状況を把握しようと声をかけてくる。
突然の滝桜の登場に、周りの視線は釘付けになった。
状況が穏やかではなかったせいで、まずいことになってしまったとその場の空気は一瞬で凍りつく。
言いながら滝桜に対し、丁寧に膝を折り頭を下げる。
周りからみると、騒いでいるのは結月だけのようだ。
怒った結月は、そのまま身を翻し足早に会場を出て行ってしまった。
鈴は終始その光景を見ていたが、何も言い出すことができずにその場に固まっていた。
結月のいなくなった会場は一気に静まり返った。
言いながらその場を後にしようとする滝桜の脳裏には、言われたばかりの結月の言葉が頭から離れないでいた。
周りには聞こえない微かな声で、ぽつりと呟く。
滝桜に対してあのように啖呵を切る女性は、後にも先にも結月しかいないのではないか?
彼女の発言の意味を、少し考える必要がありそうだ。
滝桜は無言のまま、自分の定位置へと向かっていたーー。





















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。