久しぶりの妹との再会に、鈴は怯えていた。
幼い頃の父親からの勘当宣言は、鈴の小さな心に風穴を開けた。
両親から出て行けと言われても、麗華は守ってすらくれなかった。
それどころか“出来損ないは出て行って当然だ”というような澄まし顔で鈴の姿を見送った。
その時にようやく鈴は、麗華が自分のことを嫌いだったことに気がついた。
いつも稽古で失敗していても、優しい言葉をかけて庇ってくれた麗華…。
それも、桜姫になるため。
上辺だけの綺麗さを気取るための配慮だったのか?
わからない、麗華が何を考えているのか。
どうして自分をそんなに嫌うのか。
ただ双子の姉妹なのだから仲良くしていたかっただけの鈴にとって、麗華の心の底にある鈴に対しての憎しみや悲しみを分かるすべはなかった。
分かろうとしてこなかった…という方が正しいのかもしれない。
滝本家を追い出され、行く宛のなかった鈴を助けてくれた人がいたーー。
その人に拾われ、鈴はここまで生き延びることができた。
衣食住なに不自由なく生活させてもらえ、小学部にも通わせてくれた。
そこで仲良くなったのが大谷結月だった。
鈴は結月にだけは本当のことを打ち明けた。
双子の妹がいること。
父親に勘当されたこと。
結月はその話を聞くと、凄く怒ってくれた。
誰も庇ってくれなかったことが許せないと言ってくれた。
その瞬間から、鈴は結月を親友だと思えるようになった。
簡単に話せる内容ではないし、無理に言う必要もないと彼女を拾ってくれた家主にも言われていたので打ち明けるのはかなりの勇気が必要だった。
それでも伝えた後は、言って良かったと思えた。
結月のことをもっと好きになれたから。
それから2人はずっと一緒にいる。
鈴にとっての今の家族は、ここまで育ててくれた家主と結月なのだ。
目を細めて俯く結月。
その手は強く拳をつくり、プルプルと震えている。
七瀬の手には束ねられたプリント類と参考書が積まれており、それなりの人数で勉強会が行われることを意味している。
3人はテーブルをセッティングし、七瀬が持っていたプリントを並べた。
こんな近くに桜姫がいることに、鈴と結月は感動して先程まで抱いていた麗華への感情はどこかへいってしまっていた。
意味深な七瀬の言葉に聞き耳を立てていると、放課後のチャイムが鳴り響いた。
もう間もなくこの場所で勉強会が始まる。
ペコリと七瀬へお辞儀をして、2人はその場を後にした。
入れ替わりで勉強会へ参加する生徒たちが次々と入って行くのを見て、桜姫の人気を改めて知った鈴と結月だったーー。
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。