キャストさんにお礼を言って、台に上る。
横目で次に来るゴンドラを確認すると、その色は丁度赤色と橙色のグラデーションだった。
それを見て、少しトクンと胸がなる。
頭をブンブンと振る。緊張で頭がおかしくなってるのかもしれない。
と、そんな考え事をしていたら、もう目の前にゴンドラが来ていた。
ビービーと停止の合図音がなる。
キャストさんの笑顔が辛い…。
ほっ、という声と共に、ゆあんくんがゴンドラに乗り込んだ。
私も後に続こうとするが、久しく観覧車には乗っていなかったからか、はたまた緊張からか、足元が不安定で一向に足を掛けれない。
…と言ったはいいものの、やはり乗り込めない。というか、乗り切れない。
どうしようかと焦り始めたそのとき、ふと目の前に手が差し出された。
顔を上げると、仏頂面でこちらに手を差し伸べているゆあんくんが目に入った。
ゆあんくんの手を握ると、思ったより強い力でぐいっと引っ張られた。
勢いのまま、ゆあんくんの腕にもたれつく。
手間取っちゃったし、迷惑かけたよね…と、後ろを振り向きキャストさんを見る。
だが思っていたのとは違う反応で、キャストさんは満開の笑顔でニコニコ(ニタニタ)していた。
完全フリーズの私たち。
パクパクと口を動かしていると、おかげさまで何も言えず、バタンと扉が閉められた。
それと同時、徐々にゴンドラが周りだす。
重い沈黙。外で子供の騒ぐ声が聞こえるのが辛い。
しまった。いきなり声を掛けられたから変な声が出た。
気持ち悪がられるかと思い顔を上げる。だが思ったのと反面、ゆあんくんは呆気にとられた様子だった。そして込み上げてくるものがあったのか、肩を震わして笑いを堪え始めた。
「違う生き物でしょ」なんて、良い言われようだ。
笑われているのが恥ずかしくて、つい声を荒らげる。
だが私が怒っていたのも束の間で、ずっと笑われているとこんな反応にもなるのだろうか。
私も馬鹿らしくなり、気づけば一緒になって笑っていた。
緊張がお互い取れてきたころ、ゴンドラはもう頂上に差しかかろうとしていた。
と、
急に名前を呼ばれ、ゆあんくんに顔を向ける。するとゆあんくんが、口パクで何か言っていた。
ーーこれは…
一瞬で緊張が走る。
意図を理解した私は、無言でコクリと頷き、手に力を込めた。
手にはじんわりと汗が滲んでいる。
さっきまでの雰囲気なんて、どこかに消え去ってしまったよう。
演技だとしても反応に困り、堪らず俯く。
…こーゆーときって、なんて言えばいいんだろう。
…あ、
頭に警告音が鳴り響く。
耳が痛いほど熱い。
動画のために、年上なんだから、と、グルグルと頭では考えれるのに、いざ言葉を発そうとすると何も言えない。
どうしようと焦っていると、突然手をギュッと握られた。
顔を上げると、そこには私の想い人…ゆあんくんが、膝をついて私に視線を向けていた。
ただそれだけなのに、私は酷く安心して、自然と肩の力が抜ける。
私が返事をした瞬間、貴方が嬉しそうに笑ったように見えたのは、都合がいいかな。
ーー私が返事をした時、実は演技なんかじゃなく本心だったなんて、君は気づいているのかな。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。