先輩の言葉に驚愕した。まだ権力を使って汚いことをする奴がいるなんて。
芸能界、表ではキラキラ若者にとっては憧れの世界なんだろうけど裏は黒い。今は色々と改善されてきて昔よりはマシになったと聞いたけど根絶した訳では無い。結局地位の高い物には俺達下っ端は逆らうことが出来ないのは今も変わらない。
先輩に深く聞いてみれば気に入ったモデルの卵や好みの人がいれば男女問わず強制的なお誘いが来るらしい。特にこの社長は酷く毎日遊び呆けているとか。
それで先輩は心配していた。また被害者が出てしまう可能性があり止めようにも俺の立場ではどうにもできないのが悔しくて堪らないと。
こんな卑劣な奴からの被害をこれ以上増やしてはいけない。俺もちょっとした事でもなにか出来ることを探そう。
予定時間を大幅に遅刻しのうのうと撮影現場に入ってきた社長は笑みを浮かべて挨拶だけをすると近くの席に座り偉そうな態度で目線を配る。誰も文句を言わないのはあの事と社長という位の高さからだろう。
入ってきた時から室内を覆う強めの香水に遠くから見てもわかるくらいの背丈の高さと中肉の社長は俺からの第一印象はあまり良くない。
スタッフ達は黙々と撮影を始めモデルの方をカメラで写す先輩を見て観客のように楽しんでいた。
1回目の撮影を終えると社長は先輩に近づき本音とにかく先輩を上げて褒めている。それは本音なのか建前でやっているのか。
もしかして先輩が狙われている ? 可能性は十分ある。社長の好みだった男女関係ない。それならスタッフやカメラマンだって標的の範囲内。もし狙われていたら先輩が次の被害者になってしまう。
心配ばかりが募る中先輩から突然呼ばれた。目を向けると先輩は怪訝そうな顔でどこか嫌だと言っているようなその態度はあの状況を見れば察せる。社長が俺のことを気にかけているんだろう。
軽く肩を叩かれ社長は撮影場から出ていった。とりあえずこれでひと段落だろう。
結局本当に撮影の様子を見に来ただけだったのか、目的はわからなかったが何事も無かっただけ良かった。
先輩からの注意を頭の片隅に閉まっておき次の撮影のために準備を始める。
無事に全ての撮影も終わりモデルの方との挨拶を軽く済まして機材の片付けに入る。時刻は16時を指しなんとも言えない微妙な時間。片付けが終わったとて16時30分。もう少し時間を押すものだと思ってたからこの後のことなんて何も考えていない。先輩はこの後も撮影が入ってると聞いたし大人しく帰ってゲームでもしようかな。
そんなことを考えながら廊下を歩いていると通り掛かろうとする楽屋の扉が開き中からモデルの方が出てくる。
本当に俺はツイてない。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。