今日はデート当日。なのに彼女は一切目的地を教えてくれない。というか教えてくれる気配がそもそもない。昨日突然「ICOCA持ってる?」「チャージ金額は??」と連絡してきた。それに俺は「どこまで行く予定なの?」と返信した。でも彼女は「ICOCA持ってる?」「チャージ金額は??」の一点張りだった。もう俺は諦めてICOCAを持っていること、チャージ金額を彼女に言った。彼女からは「オッケ~!」とだけ返信され、今に至る。
しばらくして俺はしびれを切らし彼女に言った。
そう答える彼女が俺の目にはふざけているように見えた。いや、彼女は間違いなくふざけている。そんな彼女を見て俺の怒りはヒートアップする。
怒りが頂点に達したのか家での口調になってしまった。謝ろうとして彼女の顔を見ると彼女は信じがたい表情をしていた。
彼女の目はキラキラと輝いていた。
彼女の顔は口調とは裏腹に半泣き状態だった。多分初めて俺がキレているのを目にしたのだろう。もともと俺はあまり怒る性格じゃないから無理もない。こんなに自分の気持ちを言ったのは小学校低学年以来だ。
簡潔にいうと、
自分らしくない
彼女はどうやら、俺が俺らしくないと考え込んでいた間でも俺を帰らせまいと説得していたらしい。
なぜ承諾したか?そんなの今まで金を出して何も楽しくないまま帰るのは目的地がわからないより最悪だと考えたからだ。
そう言うと彼女は電車の席から全力疾走する。
俺は戸惑いながらも彼女に続いて走り出す。俺はこれでも一応元サッカー部だから軽く走れば文化部の彼女に追いつくことができ、俺らは無事電車に乗ることができた。
へへっと笑いながら彼女はそういった。
俺はそんな彼女に対して淡泊に返事をする。
俺が笑うと彼女は開けた口をふさがない。
そう言いながら彼女は微笑んだ。
彼女に声をかけられた。
俺らは電車の中で声を殺して笑った。
そう言いながら彼女はニヤニヤしている。
気づけば俺は眠りに落ちていた____












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。