夏が終わり、少しずつ風が涼しくなってきた頃。
蝉の声もいつの間にか聞こえなくなって季節は秋へと変わり始めていた。
そして、私たちの学校では、体育祭の季節がやってきた。
教室で体育祭の種目表を眺めながら、楓ちゃんと話していた。
すると楓ちゃんが何かを見つけたように声を上げた。
私は何気なく返事をする。
でも…心の中では、少しだけ嬉しかった。
体育祭で頑張っている藤井くんを見られる。
そう思っただけで胸がふわっと温かくなる。
すると楓ちゃんがニヤニヤしながら私の顔を覗き込む。
一拍置いて楓ちゃんはにっこり笑う。
思わず目を丸くする。
その言葉を聞いた瞬間、顔が一気に熱くなる。
想像しただけで耳まで真っ赤になるのが自分でも分かる。
私は慌てて両手で頬を押さえる。
楓ちゃんはそんな私を見て、楽しそうにくすくす笑っている。
からかうのをやめ、楓ちゃんは穏やかな笑顔で言った。
私もつられて笑顔になる。
でも……
その日の帰り道。
ふと体育祭の種目表と楓ちゃんの言葉を思い出す。
もし本当に。
もし藤井くんの障害物競走でそんなお題が出たら私は、どうするんだろう。
「……」
そっと胸に手を当てる。
ただ想像するだけで鼓動がどんどん速くなっていく。
そして私はまだ知らなかった。
この体育祭が私と藤井くんの距離をまた一歩、ぐっと近づける特別な日になることを。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。