なんで私、床で寝てるんだろ……しかも制服のまま……。
……あぁ、なるほど。
床にこびりついている血溜まりを見て、すべてを察する。
わんちゃん死ねると思ったんだけど、あの血の量じゃやっぱり無理か……。
…………たとえ腕の肉が抉れて見えてても。
昨日は取り乱しすぎたのかも。
死にたい気持ちだけが先走って、"ちゃんと"切れなかったのかも。
……いや、やっぱり怖かっただけだろうな。
首を刺せば死ねる確率も上がったのに……刺せなかった。
いつまでも死ねない自分が……
過去から進めない自分が。
…………結局、過去に囚われているのは私だけで、周りのみんなは次に進んでる。
本当、いつになったら進めるのかな……。
静まり返る部屋でそうつぶやく。
……そうだよ、死ねば次のステージに進める。
進めるのに……。
立ち尽くす自分が無意味な存在だと再確認する。
はは…………もう、いいや。
"今日、体調悪いから学校休むね"
めうちゃんにそれだけ送って、制服のままベッドに潜る。
親にも同じような文章を打った。
血も、服もそのままだけど……いいよね。
すべてを投げ出したおかげか、すぐに眠くなってきた。
……このまま死ねないかな。
いつも通りの言葉を思い浮かべて、私は静かに目を閉じた。
「ねぇ、なんで避けるの……!?」
「別に避けてないよ」
「うん、被害妄想だよ」
「被害妄想って……実際、今日の約束破ったじゃん……!」
「あー……予定入ったって言わなかった?」
「メール残ってるはずだよ」
「……今見たけど、何もなかったよ。なんで嘘つくの……?」
「え、そんなはずないじゃん………あ、別の子に送ってたわ」
「あー、ほんとだ」
「じゃあ見せてよ、その証拠」
「なんで?」
「いや、なんでじゃないよ……! 逆にどうして見せてくれないの……!?」
「……………」
「ねぇ、何も言ってくれないの……?」
お願いだから、なにか言ってよ…………っ。
「…………めんどくさ」
「……………っ!」
嫌、いやっ…………置いていかないで、離れていかないでよ……!
一人にしないでっ…………!!
もう、ひとりぼっちは……いやなのに………………っ。
なんで離れていくの……? 私が何かしたの……?
…………そっか、何もしなくても、私は嫌われ者になるんだ。
それならはじめから、「大好き」だなんて…………言わないでほしかったよ…………っ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!