第13話

十二話「"ミスフォーチャー"」
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2026/01/01 12:01 更新
___そもそも、糖菓がこんなに不幸なことになっちゃったのは、全部僕が悪い。

僕が身体を持って動ける理由は何?
それは、僕がイマジナリー空想を逸脱したイマジナリーフレンドだからじゃない___寧ろ、イマジナリー空想を騙っている存在に過ぎない。

そもそも僕を創り出したのは幼い糖菓ですらない。
リーディ・パーミッション……全てはあいつの所為。














































___"ミスフォーチャー"

あいつが謳う"平等"な世界、幸せな人がいれば不幸な人もいる、そんな世界にする為に創られた、"人を不幸にする為だけの存在"。

それが僕だ。













































散花ちりばな葵彩あおい
「……」
 
それはそれは、創られたばかりの頃……いや、明確に僕が意思を持たされた頃?
天界から見えたその三人家族は幸せそうだったよ。

まだ物心もついていないような一人の女の子___星眠せいみん彩南さな
その子を取り囲む両親。全員笑顔だった。













































___数秒後にその幸せを全部壊したのは僕だけど。













































散花ちりばな葵彩あおい
『……ぁ』
 
___壊した、より壊れた、が近いかもしれない。

僕がその女の子___彩南の中に入った瞬間に、両親が同時にバタッと倒れて急死した。

こうなる気がしていたからあんまり驚きはしなかったけど。ただ……こうなる気がしていたから入りたくもなかった。僕の意思で入ったわけじゃない、全部あいつが決めたことだから逆らう方法なんて無かっただけ。













































___この件も、"それだけ"なら良かったのにね。













































散花ちりばな葵彩あおい
「っ……」
 
その時の彩南は、僕が入った瞬間に意識を落としたから、両親の死亡現場を見ていなかった。不幸なことにね。
幸運なことにじゃない。不幸なことに……その不幸すらもきっと仕組まれたものなんだろうけど。

両親の死亡現場なんて見てたら否が応でもフラッシュバックでもして思い出せただろうに。
 
散花ちりばな葵彩あおい
「ごめんねっ……」
 
___この時目を覚ましてくれればどれだけ良かったんだろう。

でも世界はそう上手くは回らなくて___僕が存在する時点でもう二度と、君に都合良く回ることもない。














































そのまま、君は二度と両親の急死なんて事実を知ることはない。

そのまま、君は二度と両親との幸せな日々を思い出すこともない。

そのまま、君は二度と___













































___"星眠彩南"になることはない。













































魂並こんぺい糖菓とうか
「……」
 
孤児院に引き取られた時の君の中にある認識は、自分の名前は"魂並糖菓"で、自分の両親は自分を捨てた最低な両親ということ。

___全てが嘘。

それでも、全部が嘘でも、その"嘘"は君が一生背負っていく君の中の"真実"なんだよ。

___嗚呼













































___誰が報われるの?













































魂並こんぺい糖菓とうか
「あ、ねぇねぇ見___」


「酷い!!!!何するの!!!!」
「ねぇー!!!!𓏸𓏸ちゃんが意地悪してきたー!!!!」


「今から行くからね〜!!……あぁ、後でね」
魂並こんぺい糖菓とうか
「……うん」
 
___いつもこうだった。
そもそも僕がいる時点で辿り着く孤児院がいい場所じゃないのなんて当たり前だったんだけど。

いつも糖菓以外の子が問題行動を起こしてばかりで糖菓は後回し
いつも糖菓は誰にも相手にされない

___どうして糖菓ってこんなにも、いつも報われないんだろう
 












































散花ちりばな葵彩あおい
『___ねぇ、糖菓』
魂並こんぺい糖菓とうか
「……!!!あ、貴方は……?」
散花ちりばな葵彩あおい
『僕は散花葵彩___君のイマジナリーフレンド、かな』
魂並こんぺい糖菓とうか
「あお、い……」
 
___だから、せめてもの償いとして、糖菓の初めての友達になることにした。

少しでも寂しくないように。
少しでも……笑ってくれるように。

そうすれば、いつの間にか糖菓の事が大切になっていって
いつの間にか___"不幸になって欲しくない"って、心の奥底から













































……思ってしまったんだ。












































魂並こんぺい糖菓とうか
「___"僕"ね……!!」
 
___それが
 
(___バシッ!)
 
魂並こんぺい糖菓とうか
「……え?」
 
___いけなかった。
 
「こら!女の子なんだから"私"って言いなさい!」
魂並こんぺい糖菓とうか
「え、あ……はい……」
 
___今まで糖菓に目も向けなかったくせに、今だけ、こんな時だけ"こう"だ。












































___その時から、段々と糖菓が壊れていくのがわかった。
ヒビが段々と入っていって、段々と何かが少しづつ壊れていって、それを止めたくても止められなくて











































「ねぇ、これもお願いできる?」
魂並こんぺい糖菓とうか
「……はい、喜んで」
 
きっと嫌われるのが怖かったんだ。
だからどんな事でも笑顔で引き受けてたよ、糖菓は。それは君達の仕事だよね、って言いたくなるようなことでも、笑顔で、一つも嫌な顔をせず。

……僕がいる時点でこんな事になるのは当たり前だった。僕が糖菓を思ってしまった時点で、それをあいつが良く思わなかった時点で、こうなることは必然だった。












































「___良い顔しやがって」
魂並こんぺい糖菓とうか
「……」
 
___周りの子供にそう言われることもあったけど、それでも糖菓が曲がることはなかった。

だってもう壊れてたんだよ、糖菓は
信頼されているのは愛なんだって信じ込んで
……ヒビが入って空いた穴を埋める為に、偽物の愛を愛だと信じ込んでそれで無理矢理埋める
それを無理矢理捩じ込むものだからその傷は深くなっていって、それでも無理矢理埋めたからそれに気づかない

___いや、多分、心のどこかでは気付いてたんだ。











































だから気付かないフリをする
知らないフリをする
"本物"からすら目を背けて、ただそれだけを一点に見続ける
友達とかそういったものからも目を背け続けて、全部、全部偽物だけを見つめて











































どうしてこんなことになっちゃったんだろう
___嗚呼、違う。全部僕が悪い。
でも、それでも、どうか、どうか糖菓を助けてよ

……神様はあんなのだけど、なんでもいい、なんでもいいから助けて











































助けて___











































魂並こんぺい糖菓とうか
「……え」
散花ちりばな葵彩あおい
『あ___』
 
___助かるって

そんな方法なんて、もう、無かったじゃないか。
 
魂並こんぺい糖菓とうか
「あ、あ……」
 
糖菓は優しく見えたから
当たり前の顛末だった











































___見つかったんだよ、糖菓にも、"親"が











































本来なら喜ぶべきなんだよ
でも、偽物の愛で埋められていて保たれているヒビだらけの心から、それを急に奪ってしまったら

___その心は、音を立てて崩れる。
 
魂並こんぺい糖菓とうか
「……葵彩」
 
窓の外を眺めてる糖菓を見たら、糖菓が何を言いたいか分かってしまって

___壊れる前に全部終わりにしたいんだ、って、分かってしまって
 
散花ちりばな葵彩あおい
『……いいよ』
魂並こんぺい糖菓とうか
「……!!!」
 
___見つかる前にすぐにやらなきゃだから、僕もすぐに返事をして

…僕ももう、これ以上壊れる糖菓を見ているのは、限界だったんだ











































魂並こんぺい糖菓とうか
「……ごめんね」
散花ちりばな葵彩あおい
『……良いんだよ』
散花ちりばな葵彩あおい
『寧ろ、僕の所為で……』
魂並こんぺい糖菓とうか
「……そっか」











































魂並こんぺい糖菓とうか
「___ありがとう」
 
そうして、星空の下へと落ちた。











































その後目を覚ましたのがこの世界で、それから起きたことは僕にも想定外の連続で

……それにあいつが関わってるのかは、僕もよく分からない。











































散花ちりばな葵彩あおい
「……」
 
糖菓の「よろしく」は
未だにその壊れた愛から解き放たれていない糖菓のその言葉は
"嘘"でしかない

僕は糖菓を幸せにしたい
僕がいなくなるのが一番良いんだけど、そんなことは出来ないから
 
散花ちりばな葵彩あおい
……糖菓
魂並こんぺい糖菓とうか
ん?
散花ちりばな葵彩あおい
……無理はしないでね
魂並こんぺい糖菓とうか
……してないよ?
 
___嗚呼、この言葉が

"本当"だ、って思えればいいのにな

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