ふわりと、
ひらひらと、
風に髪が靡き、
花弁が宙を舞い、
そこには彼女しか、いない。
一刻も早く動きたいのに動けない状況に、不甲斐なさと歯痒さのようなものを感じる。
それを飲み込むようにふと窓の外を見ると、とある一点が夢来の目に止まった。
そうして声をかけようと、夢来が外に出て、その小さな女の子に駆け寄る。近づいてみると何か苦しそうに泣いていて、尚更放っておけなかった。

【 明るさと哀しみを宿した幼き瞳 】晴空瑠雨
夢来を護ろうと即座に冬音が氷の壁を創り出す。幸い、そのおかげで夢来は無傷だったが、瑠雨からいきなり放たれた謎の攻撃により氷は砕けていた。
セリニアの自己紹介など待たずに、斬撃のような見た目をした魔法をセリニアに向かって飛ばす。完全にセリニア達を敵と認識したのだろう。それを向けられたセリニアは少し不機嫌そうに軽々と回避した。
夢来の能力は基本常時勝手に発動されてはいるのだ。しかし、本の文字をただ読むのと情景を一つ一つ理解しながら読むのとでは全くの別物だろう。それと同じだ、夢来が読もうと思って読まないと見えてこない世界というものも確かに存在する。
奥底に潜り込む。集中して、確かにそこにある情景を
読ん
血だらけの小さな女の子の声が聞こえた
崩壊する村が見えた
…思ったよりも、覚悟して見なければ向き合えないような悲惨な状態だった。
莉愛に叫ばれて、自分に攻撃が飛んできていることに気が付く。莉愛がなんとか避けさせてくれたから良かったが、避けれていなければどうなっていたことか。
瑠雨のミレアム達を見つめる瞳が、恐怖で揺れているようにしか見えなかったから。どうしてもこのまま引き渡すことは出来なかった。
まずい、と思って、近くにいた瑠雨を庇おうとする。…が、それよりもミレアムは速かった。
___更に速い魔法使いもその場にいたが。
星薇がミレアムの攻撃を防いでいた魔法が壊れる。星薇がまさか、とでも言いたそうに焦っていて、星薇の身に何かが起きたのは他から見ても明らかだった。
___明らかに、見たことのある姿だった。
___ローアルを目覚めさせる為に魔力を全て使い切ったあの時と、同じ。
幸い、今の星薇は前と違って、このような不足の事態にも話せる程度には魔力をどうにか別の方法で回してはいるのだが。…明らかに、状況は最悪だった。
何とか冬音がその蹴りを氷で止めて、その隙に氷の槍を創り出し、それを突き___
___その動きが、一瞬止まった。
その一瞬が命取りなことくらいは、分かっているはずなのに。
静まり返った
命の音がしなかった、あの日の城の中が、その音が
___鮮明に、蘇った。
呼吸が荒くなって、苦しくて、でもやらなければいけないから
凍えているわけでもないのに手が震える。使えば使おうとするほど妹の幻影が見える。
足に鎖と重りが繋がれているかのように動けないのを、何とか動かす。それでも引きずるだけだ、鎖は決して千切れない。罪の意識は、彼女の中で彼女が罪人であるという意識は、何も変わらない。
他の二人から見ても、冬音が無理をしているのは分かった。夢来だけが、その事情を一番知ることができるというだけ。
莉愛に庇われ、星薇に護られあんなことになり、冬音も無理をして頑張っている。
___自分は、何もしていない。ただ足を引っ張っているだけ。
___夢来には、きっと自分だけにしか分からないだろう何かが、聞こえたような気がした。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。