第38話

三十七話「幼い少女」
51
2026/07/01 01:48 更新
トルマリン・フルーリール
……
 
ふわりと、

ひらひらと、

風に髪が靡き、

花弁が宙を舞い、

そこには彼女しか、いない。
 
トルマリン・フルーリール
…三端冬音、虹乃夢来……
トルマリン・フルーリール
……




































トルマリン・フルーリール
___きっと…
 
 
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
…けど、どうしよう…
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
……闇雲に動くのは流石に…だよね
月宮(つきみや)星薇(せいら)
残念だけど、何かが起きるのを待つしかないんじゃない?
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
うん……
 
一刻も早く動きたいのに動けない状況に、不甲斐なさと歯痒さのようなものを感じる。
それを飲み込むようにふと窓の外を見ると、とある一点が夢来の目に止まった。
 
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
あれ?あの子……
三端(みつはし)冬音(ふゆね)
…見ない顔だが…
月夢(つきむ)莉愛(りあ)
……泣いてるね?
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
な、何かあったのかな…
 
そうして声をかけようと、夢来が外に出て、その小さな女の子に駆け寄る。近づいてみると何か苦しそうに泣いていて、尚更放っておけなかった。
 
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
どうしたの…?
ぇ、ぁ…うぅ…っ
…おねーちゃん、だぁれ…?
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
私は虹乃夢来。…君は?
……ぼく…
……るあ。せーくーるあ。



































【 明るさと哀しみを宿した幼き瞳 】晴空(せいくう)瑠雨(るあ)



































虹乃(にじの)夢来(ゆら)
…何か…あったの?
晴空(せいくう)瑠雨(るあ)
だいじょーぶ…なんにも、ないよ……
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
……何も無かったら、どうして瑠雨はここで泣いてるの…?
晴空(せいくう)瑠雨(るあ)
…
月宮(つきみや)星薇(せいら)
……
月宮(つきみや)星薇(せいら)
(何でしょうね、この…異質で、異様な…この感覚)
月宮(つきみや)星薇(せいら)
……!!
月宮(つきみや)星薇(せいら)
___夢来、離れて!!!
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
えっ…?
 
夢来を護ろうと即座に冬音が氷の壁を創り出す。幸い、そのおかげで夢来は無傷だったが、瑠雨からいきなり放たれた謎の攻撃により氷は砕けていた。
 
月夢(つきむ)莉愛(りあ)
な、なんで…!?!?
月宮(つきみや)星薇(せいら)
……
ミレアム・シークレット
___まさかここで防がれるなんてねっ!
ミレアム・シークレット
驚いたよ、フリーズノア王国を崩壊させた女王は伊達じゃないねっ?
三端(みつはし)冬音(ふゆね)
……誰だ
ミレアム・シークレット
ボクはミレアム・シークレット。この世界の神様だよっ!
セリニア・ラナンキュラス
セリニア・ラナンキュラス。ミレアム様の忠実な___
月宮(つきみや)星薇(せいら)
___「数千億銀河の消滅〜結末〜」
 
セリニアの自己紹介など待たずに、斬撃のような見た目をした魔法をセリニアに向かって飛ばす。完全にセリニア達を敵と認識したのだろう。それを向けられたセリニアは少し不機嫌そうに軽々と回避した。
 
セリニア・ラナンキュラス
…人の自己紹介すら待てないだなんて、月宮家はそんな教育なのね
月宮(つきみや)星薇(せいら)
聞く価値が無いと判断しただけよ
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
る、瑠雨…?
晴空(せいくう)瑠雨(るあ)
……
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
瑠雨…?
ミレアム・シークレット
その子に何があるか知りたいなら、キミの能力を使えばっ?そんな事も考えられないの?
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
……能力…
 
夢来の能力は基本常時勝手に発動されてはいるのだ。しかし、本の文字をただ読むのと情景を一つ一つ理解しながら読むのとでは全くの別物だろう。それと同じだ、夢来が読もうと思って読まないと見えてこない世界というものも確かに存在する。
 
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
……
 
奥底に潜り込む。集中して、確かにそこにある情景を


































読ん


































「にげ……て……」


































虹乃(にじの)夢来(ゆら)
…!!!
 
血だらけの小さな女の子の声が聞こえた
崩壊する村が見えた
…思ったよりも、覚悟して見なければ向き合えないような悲惨な状態だった。
 
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
(…大丈夫、落ち着いて…)
月夢(つきむ)莉愛(りあ)
夢来っ!!
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
!!
 
莉愛に叫ばれて、自分に攻撃が飛んできていることに気が付く。莉愛がなんとか避けさせてくれたから良かったが、避けれていなければどうなっていたことか。
 
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
(…今はやめよう…みんなに迷惑がかかる)
ミレアム・シークレット
そもそも、なんで戦ってるのっ?ボクは別に戦闘したい訳じゃないんだけどさ?
ミレアム・シークレット
その子がちょっと脱走しちゃってね!取り戻しに来ただけなんだよ、返してくれれば何もしないさっ!
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
……返す…?
晴空(せいくう)瑠雨(るあ)
……
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
…あの、貴方達に瑠雨は渡せません
 
瑠雨のミレアム達を見つめる瞳が、恐怖で揺れているようにしか見えなかったから。どうしてもこのまま引き渡すことは出来なかった。
 
ミレアム・シークレット
それなら殺さなきゃいけないねっ?
ミレアム・シークレット
キミの"お仲間さん"達も、何もかも、全員だよっ!
ミレアム・シークレット
それでキミは、その味方気取りの"お仲間さん"達から罵られながら死んでいくんだっ!
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
そんなことしない…!!
ミレアム・シークレット
キミに他人の何が分か…あぁ、分かるんだったねっ!
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
…貴方こそ、三人の何を知ってるの…!?
ミレアム・シークレット
生物なんて、ボクかボクに仕える優秀な人材かそれ以外かしかいないんだよっ?
ミレアム・シークレット
その"それ以外"の考えることなんて単純だよ?
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
……貴方は個人を見てない
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
私が今まで見てきた心に…一人たりとも同じ人はいない
ミレアム・シークレット
はぁ…

































ミレアム・シークレット
___そんなに死にたいのっ?
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
…!!!
 
まずい、と思って、近くにいた瑠雨を庇おうとする。…が、それよりもミレアムは速かった。

































ミレアム・シークレット
…は?
月宮(つきみや)星薇(せいら)
……良いから…離れて
 
___更に速い魔法使いもその場にいたが。
 
ミレアム・シークレット
何がしたいのキミ?そんなに死にたいのっ?
月宮(つきみや)星薇(せいら)
別に。死ぬつもりがあるように見えるのかしら?
月宮(つきみや)星薇(せいら)
悪いけど、私はまだあまりにも…満足していないもの
ミレアム・シークレット
あはっ!そうかもね、ボクからすればこの世界に存在する九割九分九厘の一生は一瞬みたいなものだけどさ
ミレアム・シークレット
でもさ…キミは間違えちゃったね?
ミレアム・シークレット
ここで選択を間違わなければ、キミはまだ生きてたのに
月宮(つきみや)星薇(せいら)
…あまり月宮家を侮らないほうが良いわよ
ミレアム・シークレット
ちょっと優秀な遺伝子を持っているだけで一瞬で死ぬ魔法使いには何も成し遂げられないでしょっ?
ミレアム・シークレット
___ねぇ、キミがそんな事を言う余裕があるのも、キミが魔法を使えるからでしょっ?
ミレアム・シークレット
だから、さ___
































ミレアム・シークレット
___これで、どう?
月宮(つきみや)星薇(せいら)
っ…!?!?
 
星薇がミレアムの攻撃を防いでいた魔法が壊れる。星薇がまさか、とでも言いたそうに焦っていて、星薇の身に何かが起きたのは他から見ても明らかだった。
 
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
…!星薇、その傷…!!
三端(みつはし)冬音(ふゆね)
……まさか
 
___明らかに、見たことのある姿だった。































ローアル・イビル
「星薇はさ、昔につけられた傷、治ってないでしょ」
ローアル・イビル
「……もう完治するものじゃない
だから魔法で消してたのに……」
ローアル・イビル
「……全部使っちゃったんだよ、その分の魔力まで、全部」
 
___ローアルを目覚めさせる為に魔力を全て使い切ったあの時と、同じ。































月宮(つきみや)星薇(せいら)
……
 
幸い、今の星薇は前と違って、このような不足の事態にも話せる程度には魔力をどうにか別の方法で回してはいるのだが。…明らかに、状況は最悪だった。
 
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
……ごめん、星薇…私の所為で…
月宮(つきみや)星薇(せいら)
…違うでしょ
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
……でも…
ミレアム・シークレット
___さて、魔法使いの子は使えなくなっちゃったけど…






























ミレアム・シークレット
___誰がボクを止めるのかなっ?
三端(みつはし)冬音(ふゆね)
っ……
 
何とか冬音がその蹴りを氷で止めて、その隙に氷の槍を創り出し、それを突き___






























三端(みつはし)雪音(ゆきね)
「___お姉ちゃん?」
三端(みつはし)冬音(ふゆね)
!!!
 
___その動きが、一瞬止まった。
その一瞬が命取りなことくらいは、分かっているはずなのに。
 
三端(みつはし)冬音(ふゆね)
……
ミレアム・シークレット
あれっ?フリーズノア王国を滅ぼしたにしては期待外れだよ!
三端(みつはし)冬音(ふゆね)
…
三端(みつはし)冬音(ふゆね)
(…違う、やらないと…星薇が動けないなら、私が…!!)






























三端(みつはし)雪音(ゆきね)
「___そんなに能力を使ってさ、もし…」






























三端(みつはし)雪音(ゆきね)
「___"こう"なっちゃったら、どうするの?」
 
静まり返った
命の音がしなかった、あの日の城の中が、その音が
___鮮明に、蘇った。






























三端(みつはし)冬音(ふゆね)
っ……
三端(みつはし)冬音(ふゆね)
(違う、やらないと、やらないと…!!!)
 
呼吸が荒くなって、苦しくて、でもやらなければいけないから
凍えているわけでもないのに手が震える。使えば使おうとするほど妹の幻影が見える。
 
三端(みつはし)冬音(ふゆね)
っ…!!!
 
足に鎖と重りが繋がれているかのように動けないのを、何とか動かす。それでも引きずるだけだ、鎖は決して千切れない。罪の意識は、彼女の中で彼女が罪人であるという意識は、何も変わらない。
 
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
(冬音…無理して…)
 
他の二人から見ても、冬音が無理をしているのは分かった。夢来だけが、その事情を一番知ることができるというだけ。
 
虹乃(にじの)夢来(ゆら)
…
 
莉愛に庇われ、星薇に護られあんなことになり、冬音も無理をして頑張っている。
___自分は、何もしていない。ただ足を引っ張っているだけ。






























___
 
___夢来には、きっと自分だけにしか分からないだろう何かが、聞こえたような気がした。

プリ小説オーディオドラマ