第35話

三十四話「誰か、救って」
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2026/06/16 04:26 更新
水面みなもすく
それで…話って
月夢つきむ結未愛ゆみあ
あ…!大丈夫ですよ、そんなにかたい話では無いので…
月夢つきむ結未愛ゆみあ
えっと…



















































月夢つきむ結未愛ゆみあ
___好き、なんですよね?光花さんのこと…
水面みなもすく
……いや、そんなこと…
月夢つきむ結未愛ゆみあ
わたしにそんなに信用が無いですか…?
水面みなもすく
…いや別にそんなことは…
月夢つきむ結未愛ゆみあ
ふふっ、安心してください…!誰にも言いません
月夢つきむ結未愛ゆみあ
わたしなんかのことを信用出来ないのは分かりますけどね…
 
少しワクワクとしているような表情を浮かべる結未愛に対し、救の表情はかなり暗かった。…何かを諦めて、苦笑しているように見えた。
 
水面みなもすく
…好きだよ
水面みなもすく
けど…どうせ光花は俺に興味なんて無いから
月夢つきむ結未愛ゆみあ
水面みなもすく
そもそも俺じゃ駄目だよ、幸せになんて絶対出来ない
水面みなもすく
だから、今のままでいい…そんな
月夢つきむ結未愛ゆみあ
___そんな我儘だと、言いたいのですか?
水面みなもすく
……実際、そうだから
月夢つきむ結未愛ゆみあ
月夢つきむ結未愛ゆみあ
…そうですね、今の救さんにはきっと、光花さんを幸せには出来ないです…
水面みなもすく
月夢つきむ結未愛ゆみあ
でも___















































そこで突如、頭の中をなにか暗いものが通過したような恐ろしい感覚に襲われる。結未愛も同じような顔をしていた。きっと彼の勘違いなんかではない。
 
水面みなもすく
___ごめん、行かないと…
月夢つきむ結未愛ゆみあ
……早く行ってきてください…!
月夢つきむ結未愛ゆみあ
…わたしなんかが行っても、邪魔なだけですから…
 
救的には、結未愛が居た方が良いのではないかと思うのだが、結未愛がそう言うのを無理強いは出来ない。一刻も早く、と思いながら、救は部屋を出た。
 
 
水面みなもすく
___光花っ…!!!
信乃拝ことのは光花みはな
…救?
水面みなもすく
無事かっ…!?
信乃拝ことのは光花みはな
…無事も何も、特に何も___














































         『 ___光花 』
 
信乃拝ことのは光花みはな
っえ…
 
ガタン、と音が鳴る。膝が地につく。頭が鈍器で殴られたように途端に痛くなる。
思い出したくもないのに、『 その光景 』は目の前で繰り広げられているかのように鮮明に、映し出されて














































「___光花!!!」
信乃拝ことのは光花みはな
「…申し訳ございません、今すぐ支度しますので…」
信乃拝ことのは光花みはな
「……」
 
___神の声なんて、聞こえるはずもない。
それなのに、その事を知るのは私自身しかいない。

髪の声が聞こえると両親が言ったから
信者がいるから
信者がそれを信じないはずがないから















































___嫌いだった。
盲目的な信仰に囚われた偽りの神を信じる信者達が、得体の知れない恐ろしい目をしながら、私の造り上げられた嘘の言葉を真剣に聞いているのが、何とも怖かったから。

そうやって生活していた
特別な事情があった訳ではない
両親が、楽をしたかっただけ。
 
信乃拝ことのは光花みはな
「……あの…」
信乃拝ことのは光花みはな
「…」
 
___けれど、このままでも良いのか、どうしてこんな事を、とか

何の為に存在しているのかすら段々とわからなくなって














































信乃拝ことのは光花みはな
「___…神の声なんて___っ!?」
 
無理矢理、その続きに「 聞こえない 」と紡ごうとした口を塞がれて、何も言えなくて、私を見つめる両親の瞳が恐ろしくて
 
「すみませんね、今日は聞こえないみたいで…」
「お帰りいただいてもよろしいですか…?すみません…」













































信乃拝ことのは光花みはな
「っ゛…!?!?」
 
___こうなることは、予測していた。
殴られて、蹴られて、首を絞められる。泣いて許しを乞うことしか出来ない、それで許されるほどこの世界は優しくない。

私はそうやって生きるしかない
嘘を吐き続けて、ずっと














































信乃拝ことのは光花みはな
「違っ、思ってなっ゛…!!!」
「嘘は言わなくていい」
信乃拝ことのは光花みはな
「っ゛、ほ、ほんとに、違っ゛、ぅ゛…」
 
___それからはずっとこう
少しでも嫌な素振りを見せれば、少しでも反抗的だったら、そんな素振りを見せなかった時ですら少しでもそう見えたら

痛かったし苦しかったし惨めだったし辛かった
なんでこんな思いをって、私だけ、どうしてこんなに苦しい思いを…

___これは、後から知った話。両親は、フリーズノア王国に知恵を貸す代わりに金を貰うことで生活していたらしかった。
しかし、フリーズノア王国に生まれた長女___三端冬音が王国を滅ぼしたから、その供給は途絶えてしまった、と。

___だから私は、こんな目に遭っていた。
あの人の所為で。













































信乃拝ことのは光花みはな
「…」
 
___苦しかった。
もう何もかも苦しくて、苦しくて、

死んでしまった方が、楽になれる。
 
信乃拝ことのは光花みはな
「……っ」
 
縄を結んで
後は椅子に乗るだけ

これ以上"信乃拝光花"が壊れる前に
死んでしまった方が良い

これ以上"信乃拝光花"という存在が穢される前に
死んでしまわないと

終わりは意外と呆気なかった
生きてた意味?分からない

そんなのもう、知らなくてもいい












































___バン!!!!!












































信乃拝ことのは光花みはな
「___えっ…」
 
あまりにも突然で、思わずそちらの方向に振り向く___振り向いて"しまった"。
 
信乃拝ことのは光花みはな
「…!?っ゛……!!!」
「何してるんだ、どうしてこんなこと…!!」
 
もう死ねない
抑えている父親の腕を振り払うほどの力は無い

あの時振り向かなければ死ねたのに
 
信乃拝ことのは光花みはな
「…」
 
___でも、私だって実の娘のはず

期待しても良いと思った
だって実の娘が死のうとしていて
それはどう考えても貴方達の所為で

___優しく、してくれるのではないかと

心のどこかで期待していた
許されないことじゃないはずなんだから












































信乃拝ことのは光花みはな
「いっ゛…?」
「なんで死のうとなんてしたんだ…!!!」
「そうでしょう、貴方はそうやっていつもいつも逃げてばかり…!!!」
 
___けれど、現実はそう甘くない

暴言と暴力の雨を浴びせられて、苦しくて、痛くて、泣いて許しを乞うだけじゃもう許されなくて
 
信乃拝ことのは光花みはな
「ごめ、なさ…っ!?」
 
___脳が理解を拒んだ

何が起きたのか、理解した直後に間違いだと思って何度も何度も思考を回した
けれど、そこにあったのは一つの結論だけ












































___父親に、唇を塞がれている。
 
信乃拝ことのは光花みはな
「えっ…」
 
それで良いのかと視線をやっても、母親は気にしていなかった。
金の為なら愛すら捨てられる
そもそも愛していたのかも分からない












































信乃拝ことのは光花みはな
「……」
 
そこからはもう、無理矢理
母親に視線を移しても、ここまで来てもやはり何も気にしていない

信乃拝光花という存在が酷く穢れた
あの時死ねなかったから











































___意識が落ちるまでだった
意識が落ちて、目が覚めると











































___そこは、見知らぬ部屋だった。
 
信乃拝ことのは光花みはな
「…施錠?」
 
寒気がする、嫌な予感がする、ぐるりぐるりと今すぐ逃げたいと叫び続けている
 
信乃拝ことのは光花みはな
「___どなたです?」
 
鍵を開けて、父親と見知らぬ人が入ってくる。
知らない、信者とは何か違う恐ろしい瞳を持っていた。
 
信乃拝ことのは光花みはな
「…えっ、と…?」
 
そうしてそのまま










































___また、無理矢理だった

抵抗が出来ない。両親に監視されていることに気が付いてしまったから。
あんな酷いことはもうされたくないから










































___次に入ってきたのは、また別の目をした人だった
 
信乃拝ことのは光花みはな
「っ゛…!!」
「お前のせいでっ…!!!!」
「お前のせいで家族が狂った!!!神なんかに、神なんかに…!!!!!」
 
___そう言われながら殴られ続けた。
私が悪い?違う、私だって言わされてるだけで本当にいるなんて思ってない
けれどそんなことは言えない
言ったら何が待ってるか
ただ素直に謝るしかない___










































___それからは毎日こう
どのくらいこんなことをしていたか、時間感覚が狂って分からない
1年も経っていなかったか、数年経っていたのか
何も、分からない。









































___そんなある日。









































信乃拝ことのは光花みはな
「…!!」
 
扉を開けたのは、よく見ると少し血で汚れた、なんだか見たことの無い瞳をした









































水面みなもすく
「…!!」
 
___神の使いの、彼だった。








































家族も、訪れていた人々も、全員死んだ。
神が私に救いをくださったから








































___くださったから…








































水面みなもすく
___光花!!!
信乃拝ことのは光花みはな
…!!
信乃拝ことのは光花みはな
…救、っ
信乃拝ことのは光花みはな
…なんで、こんなっ…
水面みなもすく
……
 
___救には、どうして急に光花がこんな事を思い出したか分かった。分かったけれど

…それを言うのは、あまりにも酷な気がしたから
 
水面みなもすく
…光花
 
 
月夢つきむ結未愛ゆみあ
___神様って流石ですね…!!
月夢つきむ結未愛ゆみあ
…救さんの愛を利用して、光花さんを傷付ければ救さんは苦しみます…流石、この世界の神様です…!!
 
___嘘だ。
彼女はそんなこと全く思っていない。

彼女は嘘を吐き続けているだけ
彼女にとって嘘は防衛手段だから
彼女はもう嘘が無いと壊れてしまうから
 
リーディ・パーミッション
___あら、分かっていたのですか?月夢結未愛








































リーディ・パーミッション
___嘘は要りませんよ
月夢つきむ結未愛ゆみあ
…嘘?
 
気が付かれるとは思っていた。しかし、体が其方へと足を動かしてしまって、こうやって会えてしまったのだから仕方がない。そう、思い込もう。
 
月夢つきむ結未愛ゆみあ
…リーディ様は凄い能力をお持ちですよね…?
月夢つきむ結未愛ゆみあ
わたしがここで会話を出来ているということは…リーディ様にはわたしが敵意を持っていないことなんて分かっているのでしょう…?
月夢つきむ結未愛ゆみあ
リーディ様がわたしなんかの敵意を読み取れないはずがないですから…!!!
 
…これも嘘だ。彼女は明確に敵意を持ってこの場所へ来た。
 
リーディ・パーミッション
……月夢結未愛、一つ勘違いしているようですが…








































リーディ・パーミッション
___貴方程度に能力は要らないのです
月夢つきむ結未愛ゆみあ
……
 
手に忍ばせていたナイフは、いつの間にか手から離れ結未愛の左肩に刺さっていた。
 
月夢つきむ結未愛ゆみあ
……リーディ様…
リーディ・パーミッション
それでは、私はこれで…
リーディ・パーミッション
…月夢結未愛、最後に良いことを教えてあげます
月夢つきむ結未愛ゆみあ
…良いこと、ですか…?
リーディ・パーミッション
えぇ








































リーディ・パーミッション
___ミレアム・シークレット達が、月夢莉愛と三端冬音の元へ向かいます
月夢つきむ結未愛ゆみあ
…!!
月夢つきむ結未愛ゆみあ
……ありがとうございます…!
 
それだけ言い残して、リーディは立ち去っていく。残された結未愛は、ナイフを肩から抜きながら、なんだか遠足の前日の子供のような顔をしていた。
 
月夢つきむ結未愛ゆみあ
ふふっ、ふふふっ…!!








































月夢つきむ結未愛ゆみあ
___待っててくださいね、わたしの姉様…!!!

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