___覚えているか?"5話前"を
ここは天界でもない、誰も来ることも除くこともできない、表と裏の世界の狭間、そこに漂うのは"遥か昔とある者から生まれた概念"だけ。
急に彼女はここに訪れた?……いいや、違う。
___彼女はずっと"ここにいた"。
物語というのは
…いや、"彼女が思い描く"物語というのは
彼女が執筆者でありながら
彼女が主人公なのである
彼女の物語は彼女が主人公だ
全員そうだろう?貴方の物語も貴方が主人公、モブAだって見方を変えれば主人公になる。
ただ、そんな"主人公"だらけの世界で、明確に"主人公"としての形が残され記されているのは、それだけの心の輝きが、光が、前を向く強さが、何かしら記されるその"理由"があるからである。
…ところで、主人公補正という言葉を聞いたことがあるだろうか。
主人公が不自然にも力を手に入れたり、都合のいい状況になったり…というものだ。もちろんこれだって一例に過ぎないが。
___彼女の描く、"彼女が主役の物語"は、正しくそれだ。
彼女は彼女の物語の主人公でありながら作者なのである。
彼女の物語の中心を征く主人公でありながら、物語の展開を決められるのだ。
___彼女にどれほど都合のいい"主人公補正"だって、あっていい。
彼女が決めた展開で、彼女が必要だと思えば
例えどれだけ不自然だろうと、絶対的な力を手にできる。___今回は、その一例に過ぎない。彼女にならクローン的存在を創り出すことも、それに違和感を持たせないことだって容易にできる。
筋書き通り
全て彼女の筋書き通りに
___ただ、筋書き通りなのはあくまで"彼女の"物語だけで
この世界の全ての物語を司るわけではない…それが不可能なわけではないが、しようともしていない。
彼女の主人公でありながら作者、としての力は絶対的なものだが
……ここまで範囲を大きくしなければ、ここまでの力で表さなければ、そんな力
…きっと誰でも持っている。
そして、今この空間にいる如月陽この本物だ。
同じ身体に同じ心を持つ"本物"なのだ。
___では何故、"偽物"を創り出して、更にはその"偽物"の姿で四人と関わる必要があったのか。
答えは簡単で単純だ。「 何をしているのか 」を悟られないようにする為である。
そもそも、話が上手く進みすぎではなかったか?
糖菓と葵彩が彩星と言葉と出会って、その直後にミレアムとセリニアに出会って(出会うというより襲われるの方が近いが)、四人だけが転送され、結果的にこのように仲良くなっている、というのは……あまりにも都合が良いのだ。
___そう、これも全て陽のやったことだ。
四人の為の四人の物語の為の、"最高の舞台"を用意することにしたのだ。
…ただ、この物語の結末は決まっていない。
どんなにつまらない展開にこれからなろうと、それだけは彼女は決めない。
彼女は舞台を用意したに過ぎない
舞台をどう彩るかは彼女の決めることではない
絵の具を用意して、
キャンバスを用意して、
筆も用意して、
___それでもどんな絵を書き上げるかは分からない。どんなにいい絵の具でも酷い絵が完成する可能性だってある。それと同じだ。
___そこにはただ一つ
___彼女が、"四人の結末"に期待している事実があるだけである。
___小さな、微かな、それでいて妙に質量のあるような、"嫌な予感"がした。
しかし他の三人はそれに気づいていないようだった。だから気付かないフリをする…気の所為だったらそれで良い、もしも本当でも……きっと、自分には何も出来ない。
___その瞬間
___身体が宙に浮いたような感覚がした。
驚きの叫びを発する余裕も無かった。
風を切っている。
身体が、自分の身体が、宙を浮いて物凄い勢いで風を切っている感覚。
景色が遠くなる、移り変わる、目まぐるしく移り変わり続ける。
しかし、こんな状況でゆっくりと深呼吸が出来るほど、糖菓は冷静ではない。返って余計に焦り始めるだけである。
___これが、ミスフォーチャーの"宿命"である。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!