第40話

三十九話「正しい選択なんてない」
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2026/07/12 15:09 更新
三端みつはし冬音ふゆね
……
 
___逃げられたということは、上手く莉愛がやってくれたのだろう。そのくらいは分かる。

これで良かったのだろうかと思考を巡らせ続ける
きっと、これが最善だと、そう信じていても___本当にそうかなんて、誰にも分からない。
 
虹乃にじの夢来ゆら
…ごめん、私が何も出来なかった所為で…
月宮つきみや星薇せいら
どうしてそうなるの…別に誰が悪いとかでは無いわ
あえて言うなら相手が悪い
虹乃にじの夢来ゆら
……
三端みつはし冬音ふゆね
…莉愛…
月宮つきみや星薇せいら
……あと10分待って
月宮つきみや星薇せいら
10分もすれば魔力が回復する…莉愛を長く放置しておくのは危険でしょう
虹乃にじの夢来ゆら
……うん
虹乃にじの夢来ゆら
…そうだね
月宮つきみや星薇せいら
……
 
莉愛のことを酷く心配しているように見えるその顔は、何か別のことも心配しているように見えた。
それが何かくらいは、二人とも分かっていたが。
 
月宮つきみや星薇せいら
…瑠雨のこと?
虹乃にじの夢来ゆら
…!
虹乃にじの夢来ゆら
…うん
虹乃にじの夢来ゆら
我儘かもしれないよね…そんな簡単には行かないのも、分かってるつもりではいる
虹乃にじの夢来ゆら
でも、きっと瑠雨は…あの小さな身体に、抱えきれなくて溢れるくらいの苦しみを抱いてる
虹乃にじの夢来ゆら
なんか…それが、その……放っておけないんだ
 
空気を入れすぎれば、風船は破裂する。負の出来事も加えすぎれば壊れてしまう。
少量の赤色の絵の具の中に大量の黒い絵の具を混ぜれば、赤色はまるで無かったかのように消えてしまう。嬉しいことがあったとしても、多大なる苦しみはそれすら見えなくしていく。

そうして壊れていくのだ___いや、瑠雨はもう既に、そういう状態だった。
 
月宮つきみや星薇せいら
…似てるわね
虹乃にじの夢来ゆら
…似てる?誰に…?
月宮つきみや星薇せいら
ローアル様に
虹乃にじの夢来ゆら
わ、私が…!?
三端みつはし冬音ふゆね
…それは…そうだな
虹乃にじの夢来ゆら
…そんなことないと思うけど…別に魔法だって使えないし…
月宮つきみや星薇せいら
いいえ…ローアル様も貴方と同じような悩み方をしていたから
虹乃にじの夢来ゆら
…同じ?
月宮つきみや星薇せいら
えぇ___守りたいものが多かったのよ、貴方と同じでね
月宮つきみや星薇せいら
(…そう、そしてローアル様ならその時、きっと…)
月宮つきみや星薇せいら
…夢来













































月宮つきみや星薇せいら
…瑠雨を、助けに行きましょう
虹乃にじの夢来ゆら
…!!
三端みつはし冬音ふゆね
…答えは分かってるけど確認の為に聞く…莉愛は?
月宮つきみや星薇せいら
莉愛を助け出すのは最優先事項だけど…どちらも選んではいけない、なんて決まりは無い
虹乃にじの夢来ゆら
…星薇…
月宮つきみや星薇せいら
(……なんて言いましたけど、ローアル様)
月宮つきみや星薇せいら
(…貴方ならどちらも選ぶでしょう?それは分かっている、分かっているんですけど…)
月宮つきみや星薇せいら
(貴方は、強くて偉大だった___私は、まだまだ未熟者)
月宮つきみや星薇せいら
(…二兎を追う者は一兎をも得ず…なんて事にならないですよね)
 
確かな決意の中に、密かに惑いが揺れているのを感じていた。
この選択が最悪の結果を招きかねないことくらい、理解しているから。
 
三端みつはし冬音ふゆね
…瑠雨を助けるなら、私に一つ提案がある
月宮つきみや星薇せいら
…提案?
三端みつはし冬音ふゆね
あぁ…












































三端みつはし冬音ふゆね
___ミレアム達の相手は、私と莉愛がする
虹乃にじの夢来ゆら
…!!
月宮つきみや星薇せいら
…本気?
三端みつはし冬音ふゆね
…本気だよ、私は
三端みつはし冬音ふゆね
……いや、そう言わせる原因は私にある。そのくらいは理解している…私が、さっきまで頼りなかったから
三端みつはし冬音ふゆね
けど、瑠雨には夢来が必要だ。そして瑠雨のあの未知の力に対抗するには星薇の魔法が無いと不安で…
三端みつはし冬音ふゆね
…かと言って、戦いながら瑠雨とまともな話が出来るとは到底思えない。かなりミレアム達のことを信用してるみたいだったから、横槍を入れられたら思う通りには進まない
三端みつはし冬音ふゆね
そうなれば、瑠雨とミレアム達は引き離しておくべきだと思う…そして、その瑠雨の元へ夢来と星薇には向かっていて欲しい、となると…
月宮つきみや星薇せいら
…残るのは冬音と莉愛ってこと?
三端みつはし冬音ふゆね
…そういうことだ
月宮つきみや星薇せいら
……一理あるわ、否定はしない…けど
三端みつはし冬音ふゆね
私の問題なら私が与えられた10分の中で何とかする、これは私の問題だから
三端みつはし冬音ふゆね
…もう7分程度しか無いけどな
月宮つきみや星薇せいら
……
 
星薇は悩んでいた。
先程から選択を迫られすぎていて、これを間違えてしまえば大切なものを失ってしまう気がして
怖かった。怖かったのだ、瑠雨を助ける道が正解すら未だ分からないから。
 
虹乃にじの夢来ゆら
___冬音、信じるよ
三端みつはし冬音ふゆね
…!!
虹乃にじの夢来ゆら
あのね、その…冬音の問題だから、私が口出ししたところで…悪影響かもしれない…けどね
虹乃にじの夢来ゆら
…一つだけ、冬音に言いたいことがあるの
三端みつはし冬音ふゆね
…言いたいこと?
虹乃にじの夢来ゆら
うん
虹乃にじの夢来ゆら
…冬音はさ、今もしかすると…自分の意思を無理矢理押さえ込んで、戦えるようにしようって思ってるかもしれない
虹乃にじの夢来ゆら
…けどさ、自分に嘘なんてついたら駄目だよ…
虹乃にじの夢来ゆら
……なんて、全然違うかもしれないけどね。その時は気にしないで
虹乃にじの夢来ゆら
ただ、これは…莉愛は、嫌がると思うって、そう思ったから言っただけ
三端みつはし冬音ふゆね
…夢来
虹乃にじの夢来ゆら
…それだけだよ…後は冬音が頑張るしかないんだと思う
虹乃にじの夢来ゆら
例え心が読めたとしても、冬音が何に苦しんでるか分かったとしても…私は冬音じゃないからさ
三端みつはし冬音ふゆね
……
 
冬音は、真剣に___自分の中の妹と、向き合おうと心に決めた。
莉愛を助ける為、大切なものをもう二度と失わない為___
 
 
月夢つきむ莉愛りあ
はぁっ、はっ…!?
月夢つきむ莉愛りあ
(無理無理無理無理この人なんでこんな動き出来るの!?!?人間じゃないでしょ!?!?あぁ嘘普通に人間では無かった!!!)
セリニア・ラナンキュラス
…大人しく諦めれば?その傷でそれだけ動けるのが不思議なくらいだけど
月夢つきむ莉愛りあ
じゃんけんって潔く負けた時よりあいこが続いて負けた方が悔しいじゃん?
それと同じでここまで頑張ったなら負けたくないの
月夢つきむ莉愛りあ
あと何より私が死んだら悲しむ人がいる!!!
セリニア・ラナンキュラス
…その理屈は理解出来ないわね
そこまで追い込まれた経験が無いもの
月夢つきむ莉愛りあ
じゃんけんする友達いないからじゃないの?
セリニア・ラナンキュラス
貴方達みたいなお遊びをしていられるほど馬鹿じゃないのよ、私
月夢つきむ莉愛りあ
(…私は星薇みたいに言い合いも得意じゃないし冬音さんみたいに強くもないし夢来みたいに奇跡みたいな何かがあるわけでもない!!)
月夢つきむ莉愛りあ
(だから正直死にそう!!てか普通に痛い!!なんなのなんで私動けてるのかなぁ!?!?)
 
そうして莉愛がちらりとミレアムの方に視線を向ける。油断されているからか、高みの見物で手は先程から出されていない。それどころかセリニアも本気で責めては来ない。遊ばれているのだ、完全に。
 
月夢つきむ莉愛りあ
(まぁ片方からでも本気で来られてたら死んでるし二人がかりでも死んでるだろうから助かるけど…)
月夢つきむ莉愛りあ
(それにしても死にそうだけど……)
月夢つきむ莉愛りあ
っ゛…!?
 
セリニアが動いてきているのは分かっていて、咄嗟に防御をしようとしたが間に合わず、剣先が背を撫でていく。舐められているので深い傷ではないのが幸いだが、先程からそんな傷の蓄積がされていた。そんな莉愛にとってこれは、かなりの痛手でしかない。
 
月夢つきむ莉愛りあ
っ゛…はぁ、っ゛…
月夢つきむ莉愛りあ
(…落ち着いて、落ち着こう、落ち着…)
月夢つきむ莉愛りあ
(……けるわけないよね!?!?いやほんと!!!)
月夢つきむ莉愛りあ
(…痛い、痛くてこれ以上動くなって身体が言ってる)
月夢つきむ莉愛りあ
(当たり前だよね、無理して動いてたんだもん、でも動かなきゃ、なの___!!!)
月夢つきむ莉愛りあ
(…だから、お願い、動いて…!!!)












































月夢つきむ莉愛りあ
___!!!
 
何かが頭の中に降ってきた。
土壇場で思いついた理屈のよく分からないアイデアだ。やれるかどうかは分からないが___
 
月夢つきむ莉愛りあ
(…視覚とか聴覚とかさ、"覚"って付いてる感覚五つを操ってきたんじゃん)
月夢つきむ莉愛りあ
(だったらさ___)












































月夢つきむ莉愛りあ
(___痛"覚"でもいけるよね!!!)
 
半ば願望混じりに能力を使う。
味覚、嗅覚、触覚、聴覚、視覚___それらが操れたなら、痛覚だって操れるはず。本当にそんな、ただの願望だけど
 
月夢つきむ莉愛りあ
…!!!!
月夢つきむ莉愛りあ
(動く…!!!)
 
___そんな起死回生の一手だって、成功するのだ。
 
 
「…も、戻ったほうが…いいんじゃない…?」
晴空せいくう瑠雨るあ
…でも、るあがいたらめーわくかけちゃうし…
「でも…もう戦いおわったと…おもうけど…」
晴空せいくう瑠雨るあ
……そうかな?
晴空せいくう瑠雨るあ
そっか、それなら___












































        「 ___ねぇ 」












































晴空せいくう瑠雨るあ
!!
晴空せいくう瑠雨るあ
おねーちゃん、だぁれ?
「…るあ、まって、そのひとは…!!!」
晴空せいくう瑠雨るあ
えっ゛…!?
 
知らない感覚だった。何か知らない強い感覚が一瞬、電撃でも喰らったかのように襲って、恐ろしさと謎の脱力感で呆気なく地面に膝をつく。
 
創星そうせい月奇つき
流石に強い?そんなこと無いでしょ?このくらいがちょうどいい
創星そうせい月奇つき
痛くしなかっただけ感謝して欲しいよねクソガキ!!!
晴空せいくう瑠雨るあ
…おねーちゃん、なに、するの…?
晴空せいくう瑠雨るあ
…また、またるあに、ひどいこと、するの
創星そうせい月奇つき
虹乃夢来___お前の言う「夢来お姉ちゃん」のことさ、どう思ってるの?
創星そうせい月奇つき
本当はちょっと嬉しかったんだろ?お前もそれには気づけてないかもだけど
晴空せいくう瑠雨るあ
……うれしくない…!!!
創星そうせい月奇つき
そう思うならそう思っときな。そう思ってるだろうとは思ってたしさ?ボクって天才だから!!
創星そうせい月奇つき
…で、酷いことするか?するよ
創星そうせい月奇つき
ボクは物語の為なら悪役でも舞台装置でもなんだって演じてやる
創星そうせい月奇つき
簡単にあいつ夢来に心を開いたら面白くないから!!!
創星そうせい月奇つき
傷が付いてたら痛々しくてなーんか見てられないしあいつらの標的がミレアムよりボクになるのは違うし…
創星そうせい月奇つき
だから痛くするのはやめた!!…クソガキには難しくて分からない?ここまでの話は
晴空せいくう瑠雨るあ
…なーんにもわかんないよ
晴空せいくう瑠雨るあ
ねぇおねーちゃん、おねーちゃんも…ぼくにひどいことするんだ…?
創星そうせい月奇つき
思ったより怖がってない___あっそうか、お前恐怖には意外と慣れてるもんな!!
創星そうせい月奇つき
ちぇっ、面白みが足りない___まぁ良いけどさ
晴空せいくう瑠雨るあ
(……くらいくらいところから、めざめたけど)
晴空せいくう瑠雨るあ
(でもやっぱり、まだくらいよ…ねぇ、ねぇ…)











































  ( …どうしたら、いいの?"ことちゃん"…… )























































































虹音こと
「……」
 
一人、小さな少女が、瑠雨の中で何かに苦しむようにしていた。

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