あなたSide
あれからはなんともなかった。私の神経は案外図太いようで、精神的ダメージというものも少なかった…と思っている。
翌朝店に行ったら2人とも、とても心配してくれた。うちの子ほんとに良い子
私が頬にガーゼをしているからか、お客様にも心配をかけてしまった。
このお客様、このお店に来るたび私に男女交際たるものを勧めてくるのだが。すみません、そういうのほんとに興味ない
この彼氏いない暦イコール年齢の私に今更彼氏だ結婚だなんて、考えたこともない
カランカラン
そのお客様と入れ違いで入ってきたのは、あのイケメン石油王さん(仮)。
今日はいつもとは違い、明太フランスパンとチーズパンを持ってレジにいらっしゃった
???Side
既に聞き慣れた声で会計を読み上げるのは、行きつけのパン屋の女主人……この前他の客があなたと言っただろうか
前回までは息子達にも買っていっていたが今回は自分用だ。
部下に買いに行かせればいい話だが、それは何故か腹が立つので毎回自分で買いに来ている
咄嗟に口から出たのはそんな言葉。なぜだ?
ガーゼをしているのなら怪我をしているのだろう。
別に興味はないはずだ
呑気な顔でそう語る。
お人好しがすぎるな
それなら…と少し不慣れな手つきでガーゼを剥がしていく。
その下にあったのはだいぶ深く切り込まれた傷口だった
近くで見るために、あなたの顎に片手でを添え、顔を近づける。
この深さでは治癒魔法では効きにくいかもな…
それならば…
そう唱えると傷跡が綺麗さっぱり消え去った
あなたから顔を離して答える
あなたSide
時間を操る魔法…?
なにそれめっちゃ強いじゃん…?
お客様は少しの時間をおいてから答える
また、少しの沈黙のあとシリルさんが口元にだけ笑みを浮かべながら言う
あなたの耳元に顔を近づけ小声で言う。
か、買い物…?
まだ羞恥でボーっとしている頭で、もちろん大丈夫ですよ、と答えた
するとシリルさんはなにか書いた紙を差し出してきた。
カランカラン
シリルさんがドアを閉めた途端、私はカウンターに突っ伏した
セーレンちゃんがハッとしたような顔でなにかブツブツと呟いている
まてまてセーレンちゃん?
その発言をしたあと、私達の空気が少し凍った気がした
何で私、今責められてんのー!?











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!