第14話

十三話
127
2026/08/12 03:45 更新
あなた
あーーー……



目を閉じると、鮮明に聴こえる蝉の鳴き声。


私はゴロゴロと床に転がりながらエアコンのリモコンを手に取る。



あなた
太宰先輩……何してんのかな…




夏休み真っ只中。私は携帯の太宰先輩の連絡先の画面を開いては閉じたりを繰り返していた。



 
あなた
遊びに誘うとか…迷惑かなーー……



夏休みも中盤。
今年の夏休みは太宰先輩を遊びに誘う、なんて意気込んでたものの、未だ連絡の一つも出来ていない。



あなた
………
芥川
今更貴様が遠慮する事無いのでは?


あなた
貴様だと…??


敦
2人とも、お、落ち着いて!


今日の昼間の事。外で偶然会った私達は、公園でアイスを食べながら話をしていた。


敦
まあ確かに。あなたの下の名前ちゃんって普段から積極的だし、メールぐらいいいんじゃ無いかな?

あなた
それはそうなんだけどさ…

芥川
今更自分が太宰さんの邪魔になっている事に気付いたか。
敦
芥川!




あなた
……



数時間前の会話を思い出しながら、またぼんやりと太宰先輩の連絡先の画面を見つめる。





ー私は、メールがあまり好きではない。


メールは、自分の感情を完璧に繕うことが出来る。

たとえ自分が傷ついていたとしても、その感情を相手には見せずに対話が出来る。




あなた
…それが、嫌なんだよなぁ。


私は馬鹿だけど、相手の感情の変化に全く気づかないほど馬鹿じゃない。



相手が感情をあまり表に出さないような相手だとしても。


表情だけではない。仕草、声色。その感情の変化は相手の身体に顕著に表れるのだ。






あなた
(……太宰先輩がたまにする、哀しそうな顔。)


あれも、きっと太宰先輩の感情が表れているのだろう。




あなた
……てか、そもそも太宰先輩今年受験生じゃん??



夏休みに遊びに誘うとか、迷惑でしかないのか??


まあ成績優秀な太宰先輩なら、勉強とかしなくても推薦で行かんのかな…

あなた
あー…なんか眠くなってきた…




よし、起きたら絶対に太宰先輩に連絡をする。


そう心に決め、私はエアコンガンガンの部屋で眠りについた。




太宰
あれ、芥川君だ。




芥川
だ、太宰さん!?

道で偶然出会った2人。

芥川にとってこんなに嬉しいことはないだろう。


太宰
芥川君が外出なんて、珍しいねぇ。


芥川
少々用事がありまして…

太宰
その帰りかい?



芥川
はい……


そう言って、芥川は思い出した様な表情になった。


芥川
あ、いえ。今は人と会った後の帰りです。
太宰
へえ。芥川君が?


太宰が少し驚いた様な表情になる。
太宰
(あの芥川君が…)



芥川
はい。


芥川
敦と、あなたの下の名前と。







太宰
え?



太宰は驚いた、と言うより、戸惑いの表情をしていた。


太宰
……



太宰
…へぇ。随分とその3人は仲良いんだね?
芥川
あいつらと仲がいいわけではありません。




太宰
ふーん?


太宰
じゃあ、私そろそろ行くね。
芥川
は、はい!




そう言って太宰は去っていった。



あなた
うーーん……


あなた
はっ!?


私は目が覚め、勢いよく起き上がった。


外はもう薄暗い。もうすぐ夕食だ。


あなた
あーー…太宰先輩に連絡しないと…



私は目を擦りながら携帯を開く。









一件の通知が来ていた。





あなた
…え?





…太宰先輩からのメール。


あなた
え?これ現実?



私は恐る恐るメールを開く。











あなた
……





私は携帯をベッドに放り出し、リビングに居る母の所へ走り出した。








あなた
おかーさん!!私の浴衣ってある!?

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