第23話

23.Tiramisu#5
20
2024/01/09 02:00
【須崎真衣】
相田咲紀
お疲れさまぁー!!!
ソファに倒れ込む咲紀さん。ボフッと音を立ててそのまま動かなくなった。
須崎真衣
お疲れ様でした。咲紀さん、大丈夫でしたか?
相田咲紀
んー、まぁ、ギリギリ、大丈夫。しょうがないよ、とーかさんいないし
須崎真衣
もしダメならその時間だけでも私がカウンターに出ます!
相田咲紀
いやいや、ダメだよ〜。大丈夫、とーかさんいない間だけだもん。真衣ちゃんばっかに頼らないで頑張るよ
中野蒼弥
お疲れ。二人とも大丈夫か?
ナキの声がするとすぐに咲紀さんは起き上がって元気に返事をした。
相田咲紀
はい!大丈夫です。まぁ、私は普段とやってる事変わらないので。ナキは大丈夫ですか?
中野蒼弥
須崎がいるし、大丈夫そうだよ
ナキに認められた気がして少し嬉しい。私がいるから大丈夫だなんて、前の職場ならありえなかったから。
相田咲紀
よかった!一週間頑張ります!
中野蒼弥
ん、頼りにしてるな
中野蒼弥
須崎は?大丈夫か?
須崎真衣
あ、はい、大丈夫です。すみません、今日ボーッとしてしまって
中野蒼弥
いや、疲れてるのかと思って、大丈夫ならいいけど
ボーッとしてたのは疲れなんかじゃない。とーかさんの言葉が引っかかっていたから。
須崎真衣
好きとかじゃ……
波瑠さんのこと、「好きとかじゃないんだよね?」って聞かれて、その時は波瑠さんのこと、後輩として好きだと思ってた。
波瑠さんは女性で、私も女で、波瑠さんは私の恩人で、だから大好きで。
でも選択肢にある好きの種類が増えた時、後輩としての好意という事に違和感を持った。likeじゃなくてloveかもしれない、なんて。
相田咲紀
どうしたの?悩み事?
須崎真衣
私、好きな人ができました
相田咲紀
え、ぇ、え!え!?
波瑠さんが好きってことは、一緒にいたいってことで、ということは……
須崎真衣
告白しなきゃ……?
相田咲紀
え!?
中野蒼弥
ちょ、ちょっと待て、一回落ち着こうか
須崎真衣
はい
ナキに促されるまま深呼吸をした。
須崎真衣
人って、どんな人が好きなんでしょうか
中野蒼弥
人?
須崎真衣
はい、一般的に
相田咲紀
一般的に?
中野蒼弥
ごめん、一般的はわからないから俺のタイプに偏ると思うけど。俺はしつこくなくて、干渉しすぎない人が好きだな
三枝優斗
追われるより追いたいタイプ
ボソッと呟きながら休憩室に入ってくる。
相田咲紀
そうなんですか?
三枝優斗
ナキが
中野蒼弥
いや、まあ、そうだけど、タイプとはまた違うだろ?
須崎真衣
……どっちなんだろ
中野蒼弥
まぁ男からしたら追いたいのは本能的なものだろうな
ナキはそう言うけど、波瑠さんは男じゃないから当てにならないかもしれない。
そもそも、女の人に恋するのは間違ってるんだろうか。少数派だからと言って間違えてると決めつけるのもおかしな話だけど、やっぱり女である私の恋話を聞けば相手を男だと思うのも自然なことで。
三枝優斗
俺はどっちでもいい
相田咲紀
三枝さん、興味ないですね?ていうか、真衣ちゃんの好きな人ってどんな人?
須崎真衣
あ、えっと、……見返りを求めずに人を助けるような、優しくてかっこいい人です。最初は憧れだったんですけど、最近好きだと気がつきました
相田咲紀
職業は?お医者さんとか、弁護士とか、?
咲紀さんは私のことを何だと思ってるんだろう。医者や弁護士と会う機会なんてないのは知ってるはずなのに。
思わず笑ってしまう。
相田咲紀
え、何で笑ってるの!可能性なくはないでしょ?
須崎真衣
ふふ、そうですね
それにしても。波瑠さんが戻ってこない。
須崎真衣
あの、波瑠さんはもう帰られましたか?
三枝優斗
ホールにいる
中野蒼弥
ちょっと遅いな。仕事はないはずだろ?
須崎真衣
私、ちょっと見てきますね
休憩室を出て、ホールに探しに行く。ホールに出てすぐ、テーブルに突っ伏す波瑠さんを見つけた。
須崎真衣
波瑠さん、波瑠さん、
横田波瑠
ん、須崎……?どうしたの?
須崎真衣
風邪引きますよ?
横田波瑠
ん、あ、寝ちゃってたのね、私
手間かけさせたわね、なんて言いながらふらふらと立ち上がる。心なしか顔が少し青ざめている気がする。
須崎真衣
波瑠さん?
横田波瑠
なに?……ぁ、
何も動かない静かなホールで、波瑠さんだけが揺れて。
須崎真衣
波瑠さん!!
私の目の前で倒れた。

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