第29話

🐺
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2024/03/27 09:12





そう。




私は、父から貰った






“私だけの”ヒプノシスマイク。


.
それは……!


魘魔あなた
「そう。これはお父さんがくれたの。
 声が出せない私の為にね」



確かに機械音っぽいけど…



話せるなら何でもいい。
魘魔あなた
「アンタなんか本当の家族じゃないから。」

.
誰が…



元母の言葉も聞かずマイクを起動する。




魘魔あなた
「忘れられぬものだけが
 美しくはないのでしょう
 忘れるものばかりが
 美しくはないでしょう

 悲しいことばかりが
 人生ではないのでしょう
 さりとて喜びとは
 比べ往くでしょう

 船よ船よ 荒波の中で
 流されずいられたでしょう
 水底に根差す
 あなたと穿った少女時代
 さよならする頃 強いられるのは 

 抜錨ばつびょう

 傷の数を数えて
 痛みの数 指を折る
 一つあまり
 小指は愛しさのぶんね

 辛いこともありましょう
 あなたの所為もありましょう
 それでも赤い糸
 結わえているのでしょう」


.
うぅっ…!!



呻きながら倒れた母を横目に、





口の中で広がる鉄の味と猛烈な吐き気を

催した私は前のめりになって倒れ込んだ。




魘魔あなた
ゲホッ…ゲホッケホ…カヒュッ



呼吸をしようと焦れば血が喉に引っかかる。


如何すればと考えれば考える程息が荒くなる…

四十物十四
だっ大丈夫っすか!?
取り敢えずゆっくり吐いて下さい

四十物十四
吸って~…

魘魔あなた
スゥ∼…

四十物十四
吐いて~…

魘魔あなた
ハァ∼…ケホッ……


上手っす、と


まるで小さな子を宥めている様だ。






暫くして、呼吸が落ち着いてきた頃。







母がポロリと溢した言葉に驚愕する。



.
私、あなたを殺すためなら
とことんするタチなのよ。だから…





“もうすぐそこまで貴女の命を
 狙っている輩が100と無く来るわ。”


.
あなたがぐちゃぐちゃになって
私のすぐ隣で横たわるの。私の夢よ


魘魔あなた
「…期待してるなら悪いけど、
 すぐに負ける程私は弱くないよ。」



四十物十四
無茶っすよ!!
そんな傷だらけの体で…




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自己防衛くらい、

自分でさせてください。


私は、大丈夫ですから

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四十物十四
っ…
四十物十四
(嫌っすよ…もうこれ以上
誰かが傷つくのを見るのは……)

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