最初は、正直――
愛想のない人だと思っていた。
笑っているのに、
どこか冷めていて。
優しいのに、
一線を引いている。
それがあなた先生だった。
放課後。
グラウンドに残っていたのは、私だけ。
体術の打ち込み。
一人でやるつもりだった。
背後から声。
振り返らなくても分かる。
軽く腕を掴まれる。
強い。
無理やりじゃないのに、
逃げられない強さ。
あなた先生は、私の構えを直しながら言った。
一瞬、思考が止まる。
今まで言われてきたのは、
なのに。
……胸が、妙にざわついた。
即答だった。
真っ直ぐな目。
計算も、同情もない。
ただ事実を言っているだけ。
その日から、
特訓は増えた。
容赦はない。
甘やかしもない。
でも。
出来た瞬間は、
ちゃんと笑ってくれる。
その一言が、
こんなに響くなんて。
ふと、思ったんだ。
もし、私に
“普通の姉”がいたら。
こんな感じだったのかもしれない。
口は悪いけど、
ちゃんと見てくれて。
ダメなところも、
武器だって言ってくれる。
真依が、
こんな人に守られていたら。
少しは、
違ったのかもしれない。
言った瞬間、
自分でも驚いた。
素直な言葉。
あなた先生は、
少しだけ目を丸くしてから。
柔らかく笑った。
その笑顔は――
前に見た
“じわじわ壊す”人の顔じゃない。
ただの、
姉みたいな顔だった。
少しだけ。
本当に少しだけ。
安心してしまった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。