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第1話

あの日のこと。
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2019/09/22 06:46
9月28日、毎年この日は複雑な気持ちになる。


「…よ、久しぶりだな…新汰。…もう6年も経ったぞ」


久しぶりに寄ったある場所で充は言う。


「…実家でさ、小さい頃のアルバム見つけたんだ、お前笑ってばっかりだよ…」


少し古くなったアルバムの写真を見ながら呟く。


「それにさ、…今日誕生日だろ?……今日は祝わないといけないのにさ……なんで…」














なんでだよ…なんでさ…
















「自分の誕生日に死んでしまうんだよ…」










9月28日は、幼馴染で大親友だった新汰の誕生日であり、命日だ。




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俺と新汰が出会ったのは4歳の頃。新汰が入園したことで出会った。
俺たちは幼稚園でもずっと一緒で、小学生になってからもずっと一緒。
何かが欠けていたから、その何かの傷を2人で埋め合わせる為に側にいたわけではない。
"隣にいるのが当たり前"、ただそれだけ。悲しいことがあった時は、愚痴を言って、辛い時があったら支え合う。それが当たり前だった。

俺が嫌がらせにあって、周りもその影響を受けたくないからか、皆に距離を置かれた時も、ずっと一緒側にいてくれて、泣きながら帰った時は黙って隣にいてくれた。


「なんで側にいてくれるの?」


って言ったら


「俺が側にいたいから」


って照れくさそうに言ってくれた時は、本当に嬉しかった。


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「……今日は久しぶりに話しに来たことだし、アルバムを見ながら思い返そうと思って持ってきたんだ」


ページをめくると、笑顔でピースをする新汰が必ず隣にいる。
笑顔を絶やさない、優しくて心強い奴だった。
朝は苦手で低血圧だから機嫌が悪いけど、お昼になるにつれて明るくなっていく姿はいつ見ても面白くて。
嗚呼、あんなに楽しかったのに。


「楽しかったこと思い出い返そう、…何話そうか……あ、将来の夢話した時もあったな…話したことがたくさんあるな…」


「あとは…今年も謝りたいんだ……あの日のことを…」


この話は22歳になった今、新汰と過ごした12年間と、俺の後悔したことを語るお話し。


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