俺はその日、自分の担当ウマ娘であるダイワスカーレットの自主トレに付き合っていた。
彼女にこう言ってトレーニングを終わらせ、自分のトレーナー室で仕事をした後、気分転換に外に出た時のことだった。
後輩がベンチに腰掛けて空を見上げている。
心なしかその目は虚ろだった。
気づいたときには既に声を掛けていた。
少し弱ったような声でそう言い、俺の目を見つめている。
そんな彼女の隣に俺はゆっくりと腰を下ろす。
俺はあなたからタキオンの怪我で気が滅入っていたこと、そんな自分の事を心配して琴奈がトレーナー室に来てくれたこと、しかしそこで琴奈に八つ当たりしてしまったことを聞いた。
震える声でそう言った後、
小さい声でそう呟き、涙を流し始めた。
俺はそんなあなたを見て、
俺はベンチから立ち上がると、あなたの手を引っ張って、琴奈のトレーナー室に向かった。
ゆっくりと扉を開けると、机の上には開かれたPCが置いてあった。
首を傾げる琴奈。
俺は開けっ放しの扉の向こう側に目で合図を送る。
呆気に取られた顔をする琴奈、目に涙を浮かべて中に入るあなた。
あなたはそう言って琴奈に深く頭を下げた。
一瞬、室内に沈黙が流れる。
そして、琴奈が口を開いた。
親友はお互いに弱さを許し合い、抱き合った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!