タキオンの衝撃の告白からしばらく経ったある日のこと。
私たちは次の目標である『大阪杯』に向けて、トレーニングを行っていた。
と、トレーニングを切り上げた。しかし、
この様に、最近タキオンが自分から追加でトレーニングをするようになってきたのだ。
と、しみじみしていた時だった。
文斗先輩だ。後ろを振り返り、軽く頭を下げる。
ダイワスカーレット。トリプルティアラのうちの2つ『桜花賞』と『秋華賞』を制し、さらにデビューから2年間、1着と2着のみという戦績で今注目を集めているウマ娘だ。
そう言って、先輩はトレーナー室に向かった。
タキオンの自主トレーニング後のミーティングで彼女にそのことを話し、より一層トレーニングに注力しようと気合を入れた。
そして時は流れ、3月下旬。
『春シニア3冠』の初戦、そしてダイワスカーレットとの初の対決、『大阪杯』の日がやってきた。
それもそのはず、『超光速のプリンセスvsミスパーフェクト』『復活の皐月賞ウマ娘とダブルティアラウマ娘 大注目の直接対決』など、今日のことは新聞やニュースなどでも多数取り上げられているのだ。
観衆を前に緊張する私と先輩。一方のタキオンは、
のんびり欠伸をしていた。
第4コーナーを進み、直線へと駆けていく。
先頭はダイワスカーレットだ。
隣で先輩がスカーレットに応援を飛ばす。が、
タキオンだ。復帰戦だというのに、相変わらずとんでもない末脚だ。
そしてその勢いのまま、
あの『ミスパーフェクト』と呼ばれているダイワスカーレットに勝利した。
先輩は悔しそうに唇を噛んでいる。その隣で私は、
客席に向かって笑顔でウイニングランをするタキオンを見つめながらそうつぶやいた。
『宝塚記念』は2200m。2000mを主戦場としていた彼女にとって少し長い距離になる。
そう言ってタキオンが取り出したのは蛍光ピンクの液体。
『すぐに飲め』と詰め寄る彼女はやはり相変わらずだった。
しかし、無事に復帰戦を勝利で飾ったタキオンの実力は確かなもの。
この調子で、次の『宝塚記念』に向けて頑張ろうと気合を入れ直した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!