最初は些細なことだった。
それは中学二年生のこと。
時々見せるようになった暗い表情、スカートのすそからのぞくあざ。
咲桜は私になんでもないよってごまかしていた。
私は咲桜がいじめられていることを察していたし、咲桜もそのことを気付いていたはずだったが、私はそれに気付いていないふりをしていた。
私だって、心のどこかで傷付いていたのかもしれない。
「いじめはだめなこと」
「たすけなきゃ、私をあかるいセカイに連れていってくれたヒーローなんだから」
でも、私は咲桜のことには手を出さなかった。
私は臆病で内向的だから。
私が何かしたら、私がいじめられるかもしれない。
そうやって、自分に言い訳をして。
気がつけば、咲桜は諦めたような寂しい笑顔ばかり浮かべるようになっていたんだ。
タイムリミットは刻々とせまっている。
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「__ ねえ、咲桜。貴方は今、笑えていますか。」
自分が咲桜にそうやって問いかける夢を見た。
同時にものすごく胸騒ぎがして、スマホを開く。
その時に送った、
『咲桜、私は貴方の味方だよ。』
というメッセージは未読のままだ。
翌朝の記憶はほとんどない。
「咲桜ちゃんが、さくらちゃんがっ。」
「え…?」
「亡くなったんだって。」
母親にこう言われたとき、私は泣き崩れる訳でも叫んだ訳でもなかった。
ただ、自分の心に開いていく穴が。
それをうめつくす、絶望が。
ただひとつ。
私の頭の中で最期の咲桜の声がこだましていた。
「ねぇ澪、大好きだよ。」
思えば、あれは咲桜の、私への、最期の挨拶だったのかもしれない。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。