第65話

63. 思い出のプラネタリウム
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2024/04/21 00:30
リノオッパに慰められながら、
漸く心身が落ち着いてきた。
まだ複雑な気持ちを抱えながら
感謝を伝え、漸く顔を上げることができた。
(なまえ)
あなた
ここって……
LK
LK
あ、今気付いたの?プラネタリウムだけど
(なまえ)
あなた
リノさん……
LK
LK
はいはい、オッパね
(なまえ)
あなた
オッパ……私、プラネタリウム初めてなんです
LK
LK
初めてなの?
へぇと漏らしたオッパは、中央の投影機へと近付いていく。
そして、そこから発せられた光をドーム状の天井、
その内側に設置されたスクリーンに映し出す。
途端に満天の星が瞬き始め、星の像や動きが再現された。
(なまえ)
あなた
綺麗……
LK
LK
そうだね
(なまえ)
あなた
自分が浄化されていく感じがします
LK
LK
そ?合宿初日が酷い嵐だったって事実よりも、
僕と綺麗な星を見たって思い出になるほうがいいでしょ
(なまえ)
あなた
……そうですね
オッパが隣にいてくれて嬉しいです
「星についてはなにも語れないけど」
オッパはそう言いながら、星を動かしていく。
春の星座が映し出され、
私はぱっとある一点を指差した。
(なまえ)
あなた
あ!そこ、それ!私の好きな星です
LK
LK
どこ?そこって言われても、
いっぱいあるじゃんㅋㅋㅋ
(なまえ)
あなた
あそこです。うみへび座を構成する星で……
LK
LK
長く伸びてるあれがうみへび座?
(なまえ)
あなた
はい。その中で際立って光る星に、二等星の
「アルファルド」と呼ばれるものがあるんですが、
それが好きなんです
LK
LK
あ~、あの橙色の目立つやつね
なんで好きなの?
(なまえ)
あなた
……アルファルドは、『孤独の星』とも
呼ばれているんです
周りに明るい星が全くないので
(なまえ)
あなた
暗闇でただ一つ光を放つ孤独な姿に
自分が重なって、どことなく魅力的で……
これもまた、先ほど聞いた彼女の過去の話に
繋がっているのだと、直感で悟る。
座席に寝そべって天井を見上げ、
改めてアルファルドを眺めてみる。
LK
LK
ふ~ん、でもあなたの下の名前(現在の名前)、ちゃんと見なよ
確かに明るい星はないけど、星自体は他にもあるじゃん
LK
LK
うみへび座には含まれない星で
肉眼では見られないだろうけど、
こうすると他にも星があるってわかるよ
投影機を弄り、暗い星をさらに映していくオッパ。
明るい星は変わらず増えないが、
確かに星は他にも存在していた。
LK
LK
それにあなたの下の名前(現在の名前)もこいつと同じで孤独じゃない
僕のほかにも7人もの兄弟がいつもそばにいる
「だから孤独なんて言わせないよ」
そう言うオッパの表情は真剣だった。
綺麗な顔を近付けられ、思わず逸らしてしまうが、
オッパは逃がしてくれなかった。
LK
LK
雨が、雷が酷くて昔を思い出してしまう日には
僕を探せばいい。近くにいなくても
すぐに会いに行ってあげるし、電話でもすればいい
「文字でのメッセージは返事が面倒だからやめて」
と付け加えられる。
冗談なのか本気なのかわからなかったが、
漸く笑うことができた。

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