リノオッパに慰められながら、
漸く心身が落ち着いてきた。
まだ複雑な気持ちを抱えながら
感謝を伝え、漸く顔を上げることができた。
へぇと漏らしたオッパは、中央の投影機へと近付いていく。
そして、そこから発せられた光をドーム状の天井、
その内側に設置されたスクリーンに映し出す。
途端に満天の星が瞬き始め、星の像や動きが再現された。
「星についてはなにも語れないけど」
オッパはそう言いながら、星を動かしていく。
春の星座が映し出され、
私はぱっとある一点を指差した。
これもまた、先ほど聞いた彼女の過去の話に
繋がっているのだと、直感で悟る。
座席に寝そべって天井を見上げ、
改めてアルファルドを眺めてみる。
投影機を弄り、暗い星をさらに映していくオッパ。
明るい星は変わらず増えないが、
確かに星は他にも存在していた。
「だから孤独なんて言わせないよ」
そう言うオッパの表情は真剣だった。
綺麗な顔を近付けられ、思わず逸らしてしまうが、
オッパは逃がしてくれなかった。
「文字でのメッセージは返事が面倒だからやめて」
と付け加えられる。
冗談なのか本気なのかわからなかったが、
漸く笑うことができた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。