第12話

第九楽章 私の音
76
2024/12/05 08:46 更新
ピアノの先生
ピアノの先生
瑠璃ちゃん、そこフォルテシモね。
それ以外はよく出来ているわ。
音橋瑠璃
音橋瑠璃
はい、分かりました。
音橋瑠璃
音橋瑠璃
〜♪〜
音橋瑠璃
音橋瑠璃
…こうですかね。
ピアノの先生
ピアノの先生
そうね、最初に比べれば、すごく良くなったわ。
ピアノの先生
ピアノの先生
…コンクールの時は、審査員さんに厳しい言葉をかけられて、苦しかっただろうけど、
明日は貴方が主役。本当の瑠璃ちゃんを見せてね。
音橋瑠璃
音橋瑠璃
はい、先生もここまで教えてくれてありがとうございました!
ピアノの先生
ピアノの先生
ん、じゃあ、今日は終わりね。
明日は楽しんでね。
音橋瑠璃
音橋瑠璃
はい、ありがとうございました!
そう言って、帰る支度をする。
…先生には、本当にお世話になったなぁ…
こうして、発表会のトリをやらせてもらえる。
きっとそこは私の舞台ステージ
楽しみだ。
と言っても、審査員の一言を思い出す。
この曲については、もう酷いくらい色んなことを言われた。
審査員
音橋さん。
音橋瑠璃
音橋瑠璃
っ…はい。
審査員
もう少し、頑張ろうか。努力は伝わるんだけどね。
そう言って審査用紙を渡された。
1人目。
審査員
瑠璃さん居ますか。
音橋瑠璃
音橋瑠璃
っ…はい。
審査員
もっとベートーヴェンを伝えなくちゃ。
ちょっと厳しいけど、これじゃあ駄目だね。
音橋瑠璃
音橋瑠璃
すいません、審査していただき、ありがとうございます。
次はこんな風に言われた。
2人目。
審査員
音橋瑠璃さん。来て。
音橋瑠璃
音橋瑠璃
…はい
審査員
君に全国への切符はあげられない。
才能が無いからね。努力で養わないと。
音橋瑠璃
音橋瑠璃
…そうですよね。審査していただき、ありがとうございます。
全国への切符。
そんな言葉が刺さる。
3人目。
審査員
瑠璃ちゃん居ますかあ〜
音橋瑠璃
音橋瑠璃
はい
審査員
今回はごめんね。でも、頑張ったのはわかったよぉ〜
だから、もっと頑張ろうねっ!
音橋瑠璃
音橋瑠璃
…はい、審査していただき、ありがとうございます。
もっと頑張ろう、ね…
頑張れてなかったみたいじゃない。
4人目。
こうして、苦い関東大会に終止線を打った。
これでいいんだ。
きっと大丈夫。
猛練習しなくていい。
苦しくなくなる。
音橋瑠璃
音橋瑠璃
っ…
目から生ぬるい水滴が零れる。
手のひらに堕ちたそれは、なんなのかよくわからない。
なんでだよっ…
お母さんはきっと、私の欲しい言葉をくれない。
それはそうか。
ちゃんと努力したら、結果がついてくるもんね。
でも毎日…頑張ってたんじゃなかったのかな?
私の「努力」は他の人から見た「普通」なのかもしれない。
じゃあ、私はどうしたらいいの?
努力しても無駄。
才能が無いから駄目。
そんな世界を生きてたの?
顔が良ければ何でもいい。
声が良かったらなおのこといい。
そんなものだったの?
ピアノなんて、私が弾いて良かったの?
弾いちゃ駄目だったんじゃないの。
また何処かで間違えたんじゃないの?
なんで?
どうして?
私に指があるのは何故?
私の声が低いのはなんで?
顔が悪いからっていじめられてさぁ。
こんな場所で生きないといけなかったの?
分からない。
存在ごと消えたい。
どうでもいい羞恥心に襲われる。










『なんでピアノなんて弾いてるの?』









『下手くそが弾いても意味ないでしょ?』











『貴方が上手いなーって思っただけよ。悪い?』














分からない。














私って、なんだったの?
そこからしばらく、私は自分が何か分からなくなった。
でも、今はピアノが弾ける。
これは、私のための夜想曲セレナーデ
この音は、私にしか出せない、私自身の音。
間違っていても、そう思いたかった。
何が正しいのか分からないじゃない。
何が間違っているのか、分からないじゃない。
明日は私が主人公なの。
私自身を魅せる日なの。




























どーんと、楽しまなくちゃね。

プリ小説オーディオドラマ