あなた視点
しーんと静まっている教室に僕の足音が響く。向かう先はもちろん寧々ちゃんの後ろにある席だ。
少し気まずさを感じながらも横を通りすぎ、席に着く。
それを確認した先生は話し始めた。
先生「えー、皆さん、仲良くしてあげてくださいね。」
....仲良く、か。
そんな呼び掛けだけで仲良く出来るわけがない。例え出来たとしても、それは表面上だけで結局中身は空っぽだ。
つまりは、無理して話しかけてくれずとも話したい時に話しに行くから気にしないでくれ。ってこと。
こんな考えを持っているから、ひねくれてるって言われても仕方がないと思う。なんだか申し訳ない。
だが、これが自分の意見なのだから尊重してほしいと思うのも人間の性なのである。だからしょうがないのだ。
そうやって自分自身に言い訳をしながら先生の話を聞く。
すぐに授業が始まるから、学校の案内や自己紹介等は昼放課にやること。困っていたら助けてあげること等いろいろ話していたが、もうどうでも良くなって途中から聞くのを止めてしまった。
きっとすぐに昼放課が来てしまうし、何か言われたらすみません、忘れちゃいました。だとか言って、もう一回聞けば良い。
そんなことよりも寧々ちゃんだ。
どうやって話し掛けよう...もしかしたら忘れてしまっているのかな...そんな事を考えていると時間が一瞬のように思えた。
結局一言も話さないまま昼放課も終わり、放課後になってしまった。
まぁ、心の準備が必要だったから...またいつでも話し掛けれるし...なんて言い訳をしながら扉をあけ、廊下へ踏み出す。
ドンッ
そんな鈍い音が鳴り僕の体は後ろへ傾く。足が地面から離れていく感覚と共に、寧々ちゃんの声が聞こえた。
寧々「あなた!」
???「.....あなた?」
心地いい低音が響いた。ぶつかってしまったことを謝ろうと上を見れば、見覚えのある髪色で...見覚えの、ある.....
類くん!?
寧々ちゃんに続き類くんにまで会ってしまうなんて、なんという偶然だろうか。
しりもちをつき、上を向いた状態で固まってしまった俺を見た類くんは驚いたような顔をしたが、一瞬でふんわりとした笑顔を見せ
類「...ふふ、やっと会えたね。あなた。」
そう、俺に話し掛けた。
あぁ、全てが懐かしい。否、新しい。
類くんがこんなにでっかくなったのも、寧々ちゃんが僕の名前を呼んでくれたのも、全て。
全てが懐かしくて、新しくて、暖かい。
『うん。やっと、やっと会えた....!』
そう類くんに返す。嬉しさのあまりに自然と笑みが溢れた。
いつぶりだろうか、こんなに嬉しいと思えたのは...自然に笑えたのは...
そうやって感慨に浸っていれば、類くんに手を掴まれた。
何故か嫌な予感がする。なんか...大変なことに巻き込まれる気が...
そう思い手を振りほどこうとするが、にこやかな笑顔で逃がさないよ?と言われた。
気がつけば隣にはカバンを持った寧々ちゃんがいた。ちゃっかり僕の分も持っている。
『ね、寧々ちゃん....?』
助けて、という目線を向ける。だが、寧々ちゃんも獲物を見るような目で一言。
寧々「....逃がさないから。」
....なんで!?
柊 あなた、人生で最大の巻き込まれをするかもしれません。
類くんに手を引かれ、寧々ちゃんと走る道は何故か行きよりも楽しかった...と思う。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!