あなたside
どうしてこの決断をしたのか、分からない。
自分で自分を殴ってやりたいくらいだ。
『離婚したい』と言って、
『どうして?』と言われた時の顔が脳裏に残る。
目黒さんのあんな顔は初めて見た。
最後の最後であんな顔を見るなんて。
神社から歩いて数分経った頃、
我に返って寒気を感じた。
待っている時は、考え事が絶えなかったため、
寒さなんて感じていなかった。
これで良かったのよね?
目黒さんは美桜さんと幸せになれる。
バレてよかったんだ。
最初から幸せになんてなれなかった。
偽物の妻の私に、
本物の妻になる権利も資格もなかったんだ。
私は白い息を吐きながら、
1粒の涙を流して実家へ戻った。
実家へ戻ることを伝えると、
2人は分かりやすく眉間に皺を寄せた。
困惑する2人を通り過ぎ、
まだ片付けられていない部屋に戻った。
狭くて埃臭い部屋。
私が掃除をしなければ、掃除などされない。
長く放置されていた部屋は、
咳き込むほどの空間になっていた。
家事をするのは嫌いじゃない。
今だったら尚更。
家事をする時は、何も考えなくて済む。
それが、今の私には楽なんだ。
数時間後、やっと綺麗になった部屋。
昔の勉強机に座り、スマホを開く。
目黒さんの連絡先。
消そうと何度も思った。
でもメッセージも電話番号も消せなかった。
会話は少なかったが、私にとっては宝物だから。
そう電話番号の画面を見つめていた時、
プルルル📞
そう画面に映ったのは、
『松村北斗』という文字。
音が鳴り止み、画面には、
不在着信が何件も。
全て北斗くんからだった。
バタバタしていて、北斗くんとは話せていない。
私はメッセージ画面に移り、
『何度も着信ごめんなさい。
話したいことがあるので、お時間ください。
今日の午後、公園で待っています。
お時間が取れたら、来てください。』
そうメッセージを送り、
私は他の家事をやるために画面を閉じた。
『分かった。時間作る。
あのブランコで待ってて。』
数時間後、そう返信があり、
私はブランコで北斗くんを待ったのだった。
𝐍𝐞𝐱𝐭➸













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!