第4話

余命宣告
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2021/05/09 04:47
志麻side
浦田 渉
あなたの命は、残り僅かです。
言われた言葉が信じられなかった。
月崎 志麻
なっ…何を言ってるんですか!?
浦田 渉
ですから、黄百合さんの命は残り1年…いえ、半年だと。
黄百合 センラ
…ッ
坂田 優
指が動かなくなるのは初期症状…次に歩くことが出来なくなります。
今すぐに入院をして頂きます。
浦田 渉
失礼ですが黄百合さん、あなたの今のご職業は?
黄百合 センラ
パティシエの専門学校に通ってます。
将来はその道に…行こうかと…
浦田 渉
心無いことを申しますが、その夢は諦めることになります。
月崎 志麻
ガタッ!
俺は椅子から立ち上がる。
医者が冷たい目で俺をみあげる。
黄百合 センラ
志麻くんええよ。大丈夫。
センラが俺をなだめる。
なんでこんなことを言われて…平然としてられる?
自分のことではないが、許せない。
黄百合 センラ
入院します。よろしくお願いします。
病院から帰る時、センラが俺に語った。
黄百合 センラ
志麻くん…2人でお店を開くって言ってたけど、出来なくてごめんな。まさかこんなことになると思わんくてさ。
月崎 志麻
ううん。そんなことはええんよ。俺はあの医者が気にくわん。
黄百合 センラ
ほんとのことやもん。あの人は悪くないよ。
そう言って笑うセンラ。
西陽に透き通る彼の髪色。
それがとても綺麗で、夜なんか来なければいいのにと本気で思った。
それから家に帰ると、センラの荷物とか色々まとめて、病院に行った。
坂田 優
黄百合さん。熱はどうですか?
黄百合 センラ
36.5です。
坂田 優
平熱はどれくらいですか?
黄百合 センラ
36.0くらいです。
坂田 優
ありがとうございます。
坂田 優
点滴打ちますね。
黄百合 センラ
はい。
浦田 渉
月崎さん、ちょっと。
月崎 志麻
はい。
俺はうらたに呼ばれて外に出た。
浦田 渉
黄百合さんのご両親は?
月崎 志麻
いません。
浦田 渉
ご兄弟は?
月崎 志麻
いません。
浦田 渉
ご親戚は?
月崎 志麻
いません。
浦田 渉
…そうですか、それは失礼なことを。
月崎 志麻
あの。
浦田 渉
なんでしょう。
月崎 志麻
もう少し、人のことを考えるようなしゃべり方はできないんですか?
月崎 志麻
センラのことを考えて、優しく語りかけるとか!
うらたは少し考えた後…
浦田 渉
癪に障るようなことをしたなら謝ります。
ですが、我々は医者です。現実をそのまま伝え、現実をそのまま知る必要がある。
人のことを考えてない、月崎さんはそうおっしゃいました。
うらたは少し怒ったような顔をして俺に近づいた。
浦田 渉
ふざけるのは大概にして頂きたい。
我々は患者のことを第一に考えている。仮にそれがあなたに患者を考えてるように聞こえないのなら…
俺は睨みつけて口を開いた。
浦田 渉
あなたは人を笑顔にするパティシエにはなれない。
うらたはそう吐き捨てると、病室に入った。
月崎 志麻
『ふざけるのは大概にして頂きたい。
我々は患者のことを第一に考えている。仮にそれがあなたに患者を考えてるように聞こえないのなら…あなたは人を笑顔にするパティシエにはなれない。』
月崎 志麻
知ったようなことを…
俺はしばらくそこから動けなかった。

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