あんなに沢山いた妖が、帰りは全く居ない。
そうして二人は近くで泊まれる宿を探す事にした。
宿屋の女将が二人を部屋へ案内する。
女将はぺこりとお辞儀をすると部屋を出て行った。
あなたは部屋に置かれた湯浴み着を手に取り、湯殿へ向かった。
部屋に一人になったぷりっつは、心を落ち着かせる為に深く深呼吸をする。
好きな人と紹介された割には平然とし過ぎでは無いだろうか。ただ好ましい人間、という意味で言ったのだろうか。
そんな考えがぷりっつの頭をぐるぐると回る。
暫く部屋の隅で頭を抱えていると、襖の奥から声を掛けられた。
湯浴みを終えたあなたが部屋に戻ると、質素だが食欲を唆られる食事が用意されていた。
あなたが少しからかうと、ぷりっつが更に顔を赤くして話を逸らした。
食事を終え、ぷりっつが湯浴みに行った頃。
またしても部屋で一人苦悶する者がいた。
己の思いがけない大胆さに今更気が付いたものの、今から宿を変えるなんて事は勿論できない。
そうして部屋の隅に座ってしょんぼりと反省していると、ぷりっつが部屋に戻って来た。
濡れた髪に湯浴み着があまりにも色気を放ちすぎている。
眠ってしまえば彼の色気も目に入る事は無いと思い、そそくさと寝る準備を始めた。
ぷりっつは肩をはだけさせ、その場に座った。
あなたが傷口に薬を塗ると、ぷりっつの体が強ばる。
普段は衣に隠れているが、こうして実際に触れるとどれだけ鍛えられているかがよく分かる。
芸術的とも言えるその肉体には彼の努力が垣間見えた。
気の利く女将さんが褥を二つ用意してくれた為、二人は褥を横に並べて眠りについた。
二人だけの空間で緊張して眠れる訳も無く、あなたは暫く褥に入ったまま耽っていた。
寝ようとは思っているのだが、いつ彼に想いを伝えるべきか、そもそもまだ好きでいてくれているのか、色々と考え込んでしまって寝るに寝れない状態になってしまった。
そうして何度も寝返りを打っていた時。
言ってしまって良いのだろうか。
あなたはこちらに背を向けるぷりっつにそっと近付く。
そのまま、彼の背中にぎゅっと抱き着いた。
あなたはその体温に安心し、ぐっすりと眠りについた。
続く











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。