第44話

雨乞い
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2024/04/25 22:26 更新
あなた
ふぁ…
翌朝、目が覚めたあなたは窓から射し込む陽を浴びながら大きく伸びをする。
あなた
ぷりっつはまだ寝て…うわぁ!
隣に目を向けると、寝ていると思っていたぷりっつは死んだ目をして天井を見つめていた。
あなた
も、もしかしてですが、寝られていないのでは…
ぷりっつ
………朝か。
あなた
あれからまだ考え事をされてたんですか…?
ぷりっつ
己の理性と葛藤していた。
あなた
なんだかよく分かりませんが、大変だったのですね。
ぷりっつ
俺は少し仮眠する。準備が終わったら声を掛けてくれ。
あなた
分かりました!ゆっくり休んで下さいね!
あなた
ぷりっつ、そろそろ発ちますが、少しは眠れましたか?
ぷりっつ
ああ、着替えたらすぐ行く。
あなた
では私は宿の玄関先で待ってますね。
あなたは部屋を出て、他の宿泊客を起こさないよう気を付けながら玄関先へ向かう。
あら、もうご出発ですか?
あなた
女将さん、お世話になりました。
ごめんなさいね、一部屋しか用意出来ずに。
あなた
いえいえ。この辺りは宿泊のお客さんが多いのですね。
普段はそうでも無いんですけど、今は患者さんの入院所として使ってるんですよ。
あなた
え、どうしてですか?
それがね…近くの施薬院がもういっぱいいっぱいで。干ばつの影響で水も食べ物も少なく、病気にかかってしまう方が多いんですって。
あなた
そうなんですか…何か力になれることがあればいいのですが。
そうねぇ。あ、そう言えば最近雨乞い行事をしてるみたいですよ。良かったら参加してあげて下さいな。
あなた
雨乞い行事ですか?
ええ、舞や歌で水神様を喜ばせようって企画なんですって。みんな得意な事を披露してるそうです。
あなた
舞や歌、ですか…
あまり得意な方では無いので、色んな人の前で披露するのは緊張するなと思っていると、用意を終えたぷりっつが部屋を出てきた。
ぷりっつ
すまない、待たせたな。
あなた
いえ、行きましょうか。ありがとうございました女将さん。
はい、お気を付けて。
宿を出て歩いていると、村の中心部で盛り上がっている人々が見えた。
あなた
あ、あれはもしかして。
ぷりっつ
なんだ?
あなた
恐らく雨乞い行事の会場ですね。さっき女将さんから聞いたのです。
ぷりっつ
なるほど、参加してみたらどうだ?
あなた
ええ!私、舞も歌も出来ませんし…
ぷりっつ
そんな事をしなくても、闇御津羽がいつでも呼べと言ってただろう。呼び出す練習にちょうど良いと思うぞ。
あなた
あ、確かにそれもそうですね…でもこんなすぐに呼んでしまって怒られないでしょうか。
ぷりっつ
いや、闇御津羽にとっても信仰を得る良い機会だ。信仰が得られないと結局また零落してしまうからな。
あなた
なるほど。なら私がお父さんの事を宣伝してきます!いい神様ですよーって!
ぷりっつ
それはちょっとどうかと…あ、おい
あなたはぷりっつの話を聞かず、会場の方へ走り出した。
あなた
すみません、飛び入り参加出来ますか?
お!是非是非!なんでも披露しちゃって下さい!
あなたはそのまま参加者の列に並んだ。

観客はそれなりに多く、壇上では舞や歌の他に狂言をする者や面白可笑しく一発芸をする者もいて、かなり盛り上がっている。
あなた
わ、私もなにかするべきでしょうか…
特に何も考えずに参加してしまった為、あなたは披露出来るような芸が何も無い事に今更気付く。

どうしようかと悩んでいると、とうとう順番が回ってきた。
最後の参加者は彼女!飛び入り参加してくれた謎の少女です!
あなた
ははは初めまして!では、ええと、薬草に使える雑草と言えば露草などがありますが、使用する際には早く洗っておいた方がいいですね!
いざ壇上に上がると沢山の観客が目に入り、あなたは極度の緊張により自分でも何を喋っているか分からなくなってしまっている。
あなた
そ、そんな時に使える駄洒落を一つ!
薬草"やくそう"は、早く掃除は"やくそう"じした方がいい。

客席がしーんと静まり返った。
…素晴らしい駄洒落でした!
司会者の心遣いが寧ろあなたの心に刺さる。
あなた
す、すみませんでした、何かした方がいいと思いまして…。ごほん、あの、雨乞いをさせて頂きます。
意味の分からない駄洒落を披露してしまった事を早くも後悔しつつ、気持ちを切り替えて本題に入った。
あなた
水神、闇御津羽様。
この地を雨でお浄め下さい!
正直な所正しい呼び出し方なんてものは分からないが、気持ちを込めて念じてみる。
闇御津羽様、初めて聞く神様ですね!さて、雨は降るのでしょうか!
目を瞑り父に願う。


そのまま十秒、二十秒と時間が流れる。

するとその時。
あれ、え!?雨、雨です!皆様!雨が降りました!
あなた
良かった…!
これ、本当に…?
本当に雨なのか?
今回もどうせ駄目だろうと誰もが思っていた為、観客達は皆困惑する。
ひとまず、謎の少女と水神闇御津羽様に大きな拍手と感謝を!
雨乞い行事を無事に終え帰っていると、村の人に次々と声を掛けられる。
お嬢ちゃん、ありがとうね!
貴方のおかげで作物が育つわ。ありがとう。
あなた
お礼は私ではなく闇御津羽様に仰って下さい。私はただ念じただけですので。
少しばかり恥をかいたが、目的は無事果たす事が出来た。
あなた
…ところでぷりっつはいつまで笑ってるんです。
ぷりっつ
す、すまない、思い出すと…っ
堪えようとはしているものの、先程から肩がぷるぷると震えている。
あなた
咄嗟に浮かんだのがあれくらいしか無かったんです!
ぷりっつ
そうだな…っっ
あなた
もう!いい加減笑うのをやめてください!
ぷりっつ
ふぅ…悪い悪い、必死な様子があまりにも可愛くてな。
あなた
全く、それで許して貰えると思っているのですか。
ぷりっつ
可愛かったのは本当だぞ。それに今こうしてむくれている顔も楽しめて一石二鳥だ。
あなた
なっ、反省していませんね!そんな悪い子は置いて行きますよ!
あなたは照れているのがばれないようにぷりっつを置いて小走りで先を進む。
ぷりっつ
悪かったからあんまり一人で動くな。
追い付いたぷりっつはそのままあなたの手を引いて歩き始めた。
あなた
別にそう捕まえていなくても一人でどこかへ行こうと言う訳では無いのですけど…
ぷりっつ
お前と手を繋ぎたいだけだ。分かったら黙って捕まえられてろ。


その言葉に照れて大人しくなったあなた以上にぷりっつの耳が赤くなっている事は、彼の名誉の為に内緒にしておいた方が良いだろう。
続く

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