第39話

零落した神
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2024/04/18 19:12 更新
ぷりっつ
あなた、入っていいか?
襖の奥からぷりっつの声がする。

先程の事でどんな顔をすればいいのか分からないが、拒否なんて出来るわけも無いので、そのまま入って貰うよう促す。
詩織
良かった。案外元気そうだね。
あなた
あ、詩織さん。お見舞いに来てくれたのですか?
詩織
それもあるんだけど、二人に話しておきたい事があるんだ。
あなた
話しておきたいことですか?
詩織
これはほんとに可能性の話だから、あんまり期待せずに聞いてね。
詩織はそう前置きをすると、神妙な面持ちで話し始めた。


詩織が話したのは二つ。

あなたの父が水神、闇御津羽くらみつはである事。

闇御津羽は数年前民の信仰を無くし、妖に零落してしまった事。



ぷりっつ
つまり、浄化すればあなたの妖気を神気に変えられる、と言う事か。
詩織
そういう事。ただ、闇御津羽自身が望んでいないと浄化は厳しい。命の危険さえある。
あなた
浄化はどうすればいいんですか?
詩織
それはぷりちゃんが分かるはずだよ。浄化は神気を持つ者しか出来ないから、あなただけでやろうとするのは不可能だ。
あなた
そんな、命の危険があると聞いてまで巻き込む訳にはいきません。
ぷりっつ
俺がやりたくてやるんだから口出しされる筋合いは無い。なんならお前は診療堂でじっとしていろ。
あなた
なに馬鹿なこと言ってるんですか!命が懸かってるんですよ!?
ぷりっつ
お前に再び触れられるなら、命をいくつ懸けても構わないが。
真っ直ぐにそう伝えられ、あなたは口ごもってしまう。
詩織
でも問題はもう一つあるんだ。
ぷりっつ
なんだ?
詩織
今、闇御津羽が何処を住処にしているのかが分からない。一度もそれらしき姿を見た者が居ない事から、祓われてしまった可能性も考えれる。
あなた
うーん、それは確かにそうです。なんとか情報をかき集めるしか…
どこをどう探すべきなのか検討もつかず、あなたは頭を悩ませる。
詩織
少ない情報ではあるけど、闇御津羽が神だった頃は山奥の渓谷に住んでたらしいよ。
ぷりっつ
渓谷…では沼神と言うのは蔑称か。
あなた
そうなのですか?
ぷりっつ
天然の渓谷は浄化の水が流れているから、妖等は絶対に近寄れない。反対に、沼地は妖が非常に寄り付きやすい。
詩織
つまり、神から妖に零落した闇御津羽を表すのに適切ながら、最も残酷な呼称って訳。
あなた
なら、今は沼地に棲んでいる可能性が高いって事でしょうか?
詩織
充分考えられる。とにかくまずは情報が必要だから、二人がやる気なら手伝うよ。
ぷりっつ
勿論だ。
あなた
は、はい!
ぷりっつ
詩織、お前何を捧げた?
部屋を出た後、ぷりっつは詩織を呼び止めた。
詩織
ん、何のこと?
ぷりっつ
闇御津羽のこと、天照に聞いたんだろう。でなければお前が知っている理由が無い。教えて貰った代わりに何を捧げたんだ?
詩織
ああ、流石にばれた?でも安心して、そんな心配する程の代償じゃないから。
ぷりっつ
何故腕を隠してるんだ。
詩織
別に隠してる訳じゃないよ。ほら、なんともないでしょ?
詩織は両手を上げてぷりっつに見せる。
ぷりっつ
いつも付けている腕飾りは?
詩織
えっ
詩織は明らかに動揺した後、しまったといった顔をする。
ぷりっつ
正解みたいだな。
詩織
はぁ…ぷりちゃんって意外と人の事見てるよね。正解、弟の形見あげたの。
ぷりっつ
あれは遺骨で作った物じゃなかったか?本当に良かったのか。
詩織
昔の事なのに良く覚えてるな…良いか悪いかで言ったら、そりゃ良くないけどさ。
ぷりっつ
なら返して貰おう。俺が代わりの物を捧げればいい。
詩織
あー違う違う。あなたが苦しそうだなって思ったら、弟の形見を失う方がましだと思ったんだよ。なんせ初めて出来た『女友達』だから。
ぷりっつ
何が女友達だ。まあお前が納得してるならそれでいい。それと、ありがとう。
詩織
良いってことよ。それに、俺は以前あなたに命を助けられたからね。恩返し恩返し。
ぷりっつ
はぁ、いつ?
詩織
内緒!じゃあそろそろ行くね。あ、代償の事あなたに言ったら殴るから〜。
そう言うと詩織は後ろ手を振りながらどこかへ行ってしまった。
続く

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