第38話

言葉の意味を
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2024/04/17 03:39 更新
あなたが目を覚ますと、そこは柔らかい寝台だった。
あなた
ここは…
ぷりっつ
起きたか
あなた
ぷりっつ…という事は、ここはぷりっつのお部屋ですか?
ぷりっつ
そうだ。
部屋の中を見回すと、物は必要最低限しかなく、綺麗に整えられてある。
ぷりっつ
あんまりじろじろ見るな。
あなた
あっすみません、なんだか新鮮で。
きょろきょろと部屋を見回すあなたを窘めると、ぷりっつは寝台の端に座った。
ぷりっつ
…お前を巻き込んでばかりで本当にすまない。
あなた
いえ、ぷりっつはなにも悪くありません!
私が疑いもせずほいほいと食べ物に釣られてしまったのがいけないのです。
ぷりっつ
お前はいつもそう言うな。
あなた
だ、だって事実です…!
ぷりっつ
分かってるならお前はもっと自分を大切にすべきだ。
あなた
別に、大切にしていない訳では無いですよ。
ぷりっつ
いや、していないな。他人の為にすぐ自分を犠牲にするし、何かあっても自分で解決しようとするし、悩んでいても明るい振りをする。
あなた
そ、そんな事は…
否定しようとするあなたを黙らせるように、ぷりっつが覆い被さる。
ぷりっつ
本当にお前は、俺の心を乱す天才だな。
あなた
…そ、それはこちらの台詞です!
組み敷かれたような体勢に動揺し、あなたの頬が赤く染る。


ぷりっつ
俺を頼って、俺に守られていろと言っただろう。お前が傷付けられるのは見たくない。

以前は聞けなかった。あなたは彼に近付いてはいけないから。

その言葉の意味を聞いても、返事は一つと決められているから。
あなた
それは…
『どういう意味ですか』





静かな空間に、祭りの余韻の賑わいがやけに響く。



ぷりっつ
お前が…あなたが好きだと、ずっと伝えているつもりだ。


彼の頬が赤い。



あなた
わ、私…




私も貴方が好きだと、言えたらいいのに。




あなた
私は…


口から出そうになる言葉を、唇を噛んで抑え込んだ。


ぷりっつ
無理に返事をしなくていい。俺がお前の事がどれだけ大切に思っているか分かってくれれば、それでいい。


しっかり休め、と言って、ぷりっつは部屋を出て行った。

数時間前
零華
お疲れ〜お疲れお疲れ〜。はぁ、やっと解放されるわー!あれ、ちょっとどこ行くの!
ぷりっつ
帰るんだが。
零華
父様が、式が終わったら宴会場に来いって言ってたわよ。
ぷりっつ
はぁ、面倒な…
苛立ちながらぷりっつが早足で宴会場へ向かうと、下婢が中へ声を掛けた。
下婢
旦那様、若様がお越しです。
鷹羽慶次
来たか。
下婢が襖を開ける。


そこには、床に倒れるあなたと落ちた盃。

ぷりっつはすぐに状況を理解した。
ぷりっつ
これはどういうつもりだ。
鷹羽慶次
お前を思っての事だ。
ぷりっつ
ふざけるな!浄めの神酒みきが、妖気を持つ彼女にとっては毒になると分かっていての所業か?
鷹羽慶次
なんだ、分かってるんじゃないか。ならこれで目が覚めただろう。そのような娘にうつつを抜かしていては…
ぷりっつ
お前と話す事はない。二度と彼女に近付かないでくれ。
鷹羽慶次
目を覚ませ!お前はこの家を継ぐ事になるんだぞ。見合いを断り続け、神気まで侵され…お前は鷹羽家の顔に泥を塗るつもりか!
ぷりっつ
俺には関係無い。家を出ると言ったはずだ。それでもこうして奉公の行事に参加しているのも、俺の好意であると理解して貰いたい。
鷹羽慶次
なんだと!?育ててやった恩義を忘れたか!
声を荒らげる慶次を無視し、あなたを抱き上げる。
鷹羽慶次
若い内は好きにすればいいと薬師をやる事も許した。だがお前が産まれた時から、お前は跡取りになると決まっているんだぞ。
ぷりっつ
俺はこれで失礼する。それと、俺は他の女と結婚するつもりは無い。
ぷりっつはあなたを抱えたまま、宴会場を出た。
詩織
ぷりちゃん
ぷりっつ
…詩織か。
詩織
あなたが倒れたって聞いて…大丈夫だった?
ぷりっつ
ああ。今は部屋で休んでる。
詩織
ごめん。俺も父さんに頼まれて君達を引き離す事に加担してたのに、心配するなんてお門違いって事は分かってるんだけど。
ぷりっつ
気にしなくていい。これはどう考えても親父がやり過ぎだ。
未だ怒りが収まらない様子でぷりっつが言い放った。
詩織
それと、一つ伝えたい事があって。
ぷりっつ
伝えたい事?
詩織はこくりと頷く。
詩織
もしかしたら、ぷりちゃんがもう一度あなたに触れられるようになる方法が、一つだけあるかもしれない。
続く

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