第10話

葛と藤
76
2021/04/20 11:00 更新
もう一度、やり直せるなら。
そしたら、私は救われたかな。
なんて、考えてみたって何かが変わる筈もないのに。
それでもあの思い出を、忌々しい記憶を蘇らせてしまうのは、私が弱いからなのか。





あの日、有紀は数学オリンピックで優勝できなかったのに。



人一倍努力家でプライドも高かった有紀は、心底悔しいだろうに。











それなのに。






『そんなの、どうだっていいんだよ。ただ、今私が生きていて、隣に晴夏がいる、それだけで、私は毎日が楽しいんだ。』






















なんて言って、笑い飛ばせるあの子有紀に、私は______。














あの頃みたいに、嫉妬に揉まれて、感動に包まれて、絶望も希望も、全部が愛しくて。
有紀みたいになれないと解ってたけど、それでもまだ夢の中にいた私と、真っ直ぐ前を見つめていた有紀。
底無し沼を駆ける私と、空に向かって飛び上がる有紀。



追い付けない。天才と凡人は紙一重じゃない。


天才の隣には天才がお似合いだ。




私なんかじゃあ、話にならない。




ただの見世物のような現実。




















でも。
















その違いが、見えていなかった私がそこにいた。



































あの時の、海吉晴夏をとむらう。


































“ 私は、ずっと有紀になりたかった。”

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